川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

ピースボート、100回目の出航!(12月26日横浜)

ピースボートは35周年を迎え、来る12月26日(水)にはついに「第100回ピースボート」が出航します。南回りの今回の航海では、自然エネルギーによる照明の普及プロジェクトが行われるほか、おりづるプロジェクトとしては、在ブラジルの被爆者が乗船して日本まで来られます。26日(水)午前に横浜港で出航記者会見を行います(詳しくはこちら)。 私が最初に乗ったピースボートは第24回(1998年)。スタッフとして初乗船したのは第44回(2003~2004年)の南回りでした。そのときに初めて担当した地球大学プログラムも、今日ではさまざまな形で拡大しています。こちらのFacebookページでチェックしてみてください。 何とかかんとか100回目の出航までたどり着けた(出港の様子はこちらをご覧下さい)のも、これまで参加してくださった皆さん、支えてくださった皆さんのおかげです。本当に感謝しきれません。自国中心主義と内向き志向の広がる今日、ピースボートが果たしていく役割と責任はこれまで以上に大きくなっていると思います。引き続き皆さん、参加と応援をよろしくお願いします。  

2018/12/22 · Leave a comment

サーロー節子さんと共に、日本政府に核兵器禁止条約への加入を働きかけました

広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんが、先月から今月上旬にかけて来日されていました。サーローさんは、2008年にピースボートが「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」を開始したときに計103名のなかの中心的な被爆者として参加されました。サーローさんはまた、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の顔として、核兵器の非人道兵器を世界に訴える運動の最前線で活動を続けてこられました。核兵器の非人道性に関する国際会議や、核兵器禁止条約の交渉会議には常にサーローさんの存在がありました。そうした活動を通じて大変お世話になってきたこともあり、今回彼女が母校の広島女学院大学の招待で来日された際に、広島と東京でのNGOとしての諸活動のコーディネートをさせていただきました。東京では、岸田文雄自民党政調会長、西村康稔内閣官房副長官、辻清人外務大臣政務官、原田義昭環境大臣・衆議院議員と面会し、日本の核兵器禁止条約への加入を求めました。そのときの様子は、ピースボートのホームページ(こちら)に紹介していますのでどうぞご覧ください。 なお、12月23日(日)朝6:15~、NHKテレビ(総合)「目撃!にっぽん」でサーロー節子さんのこのたびの来日を追ったドキュメンタリー(35分間)が放送されます。私も楽しみに観たいと思います。 (リンク↓) 目撃!にっぽん「光に向かって進め~サーロー節子 祖国へのメッセージ~」

2018/12/20 · Leave a comment

今夏のピースボート地球大学「特別プログラム」の報告書ができました

ピースボート地球一周の船旅のアジア区間を活用して、アジア諸国の学生が英語で学ぶ地球大学「特別プログラム」を始めて5年が経ちました。今年は9月前半に、日本~中国~シンガポール~カンボジアで「ともに築くアジアの平和」をテーマに実施、6カ国・地域から17名が参加しました。このプログラムは東京外国語大学の「コンフリクト耐性」プロジェクトの一環として行われ、私は同大学の講師という形でコーディネートにあたっています。同大学から今年は6名の学生が参加しました。台湾、インド、マレーシア、東チモール、ブルネイの学生らとの間で活発な議論や交流が連日くり広げられました。(プログラム報告はこちら) プログラムのナビゲーターとして、毎回の講師の人選と交渉には力を入れていますが、今年もユニークな講師陣が並びました。シンガポールで移住労働者の支援を行うジョン・ジーさん、マレーシアの人権活動家ファウジア・ハサンさん、そして平和構築の専門家である伊勢崎賢治さんです。下船後に滞在したカンボジアでも、多くの現地の方々から地雷問題の現状などを教えていただきました。コーディネーターでありながら自分自身にとって学びが多く、刺激を受けるプログラムです。5年前にこのプログラムを起ち上げたときからピースボートスタッフの畠山澄子さんと二人三脚でやってきましたが、今回は、畠山さんにはとりわけ主導的にプログラムを牽引し、大活躍してもらいました。    

2018/12/18 · Leave a comment

第99回ピースボートが横浜に帰ってきます

9月1日に横浜を出航した第99回ピースボートが、地球一周の船旅を終え12月17日に横浜に帰港します。17日午前、帰港記者会見が横浜で行われます(会見について詳しくはこちら)。この船旅では「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」を実施。広島の被爆者の塚本美知子さんと空民子さん、そしてユース非核特使として安藤真子さんが参加し、地球一周のさまざまな寄港地で証言活動に取り組みました。私もクルーズ冒頭に参加したほか、ニューヨークでは被爆者の皆さんと共に国連総会でのサイドイベント、ラドガース大学での証言会などに参加しました。活動の様子は「おりづるプロジェクトのブログ」を是非ご覧下さい。※帰港会見の様子とプロジェクト報告はこちら。

2018/12/15 · Leave a comment

[2018.12] 迷走する日本決議

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 迷走する日本決議 国連総会第一委員会で日本が提出した核兵器廃絶決議が賛成多数で採択され、政府は核兵器国と非核兵器国の橋渡しをしたとしている。だが実際は、これまで賛成していた米仏は棄権で、核兵器国からの賛成は英のみだ。オーストリアやメキシコなど核兵器禁止条約の推進諸国は昨年に続き棄権している。核兵器禁止条約に言及しないばかりか、過去のNPT合意文書にある核軍縮の表現を大幅に薄めているからだ。 昨年の日本決議はこうした核兵器国へのすり寄りが厳しく批判され、賛成を大幅に減らした。そこで今年は少し核軍縮の言及を復活させた。すると今度は米仏が拒絶した。米国は、NPT第6条(核軍縮)や過去のNPT合意への言及を嫌ったという。これらの条文や合意じたいを拒絶するようではNPT体制の信頼性が揺らぐ。開き直る核兵器国へのすり寄りは危険だ。(川崎哲、ピースボート)  

2018/12/09 · Leave a comment

核兵器禁止条約あるある(FAQ) その2「この条約には実効性がない」

Q1.なぜ、核兵器禁止条約を批判しているのですか。この条約のどこが悪いのですか。 A1.核兵器禁止条約には核保有国が一カ国も入っておらず、入る見込みもないから、実効性がない。 Q2.それは、入らない核保有国が悪いのではないですか。条約が悪いのですか。 A2.核兵器禁止条約は、一発も核兵器を減らさない。 Q3.「核兵器禁止条約は、一発も核兵器を減らさない」って、核保有国に言われたくないですね。だったら自分が核兵器を減らせばいいんじゃないですか。むしろ核保有国が核軍縮をしっかりとやってこなかったから、核兵器禁止条約が作られたのではないですか。 A3.我々は核兵器禁止条約ではなく、核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)などを通じて一歩ずつ現実的に核軍縮を進めていく。 Q4.核不拡散条約(NPT)も包括的核実験禁止条約(CTBT)も、それ自体として核兵器を一発も減らしませんよね。どの条約も、それだけで完全というものはないと思いますけど、どうですか。 A4.核兵器禁止条約は、NPTやCTBTを通じた現実的なアプローチと相容れない。我々は諸国に対して、核兵器禁止条約に署名・批准しないよう求める。 Q5.核保有国は、核兵器禁止条約にまだ入れないと思うのであれば、入らなければいいじゃないですか。入らなければ、その国は法的に拘束されません。なぜ、他国にまで条約に入るなと呼びかけるのですか。核兵器禁止条約に入る国が増えると、何か困ることがあるんですか。 A5.我々は、核兵器禁止条約が国際関係に与える影響を憂慮している。 Q6.つまり、核兵器は悪だという国際規範が強まると、核保有国の特権が脅かされる、そのことを恐れているのですか。いずれにしても、核保有国がそれだけ敏感に反応しているということは、この条約はすでに事実上の効力を持っているということですよね。 A6.核兵器禁止条約は、国際社会を分断している。 Q7.NPTこそ、世界を「核兵器を持っていい国」と「持ってはいけない国」に分断しているのではないですか。 A7.NPTは、世界的な核不拡散と国際安全保障の要である。核兵器禁止条約は、NPT体制を損なう危険性がある。 Q8.核兵器禁止条約がNPTをどのように損なうのですか。核兵器禁止条約に署名・批准する国が増えれば、核兵器は悪だという規範は強まり、核兵器不拡散を強化しますよね。 A8.核兵器禁止条約にある保障措置の定めは、不十分なものだ。 Q9.たしかに核兵器禁止条約に定められている保障措置は最低限のものですが、将来的により強力な協定をめざしていくことが想定されています。NPTにおいても、保障措置の強化は現在進行形の課題ですよね。両方が手を取り合って強化していけばよいのではないですか。 A9.核兵器禁止条約は、NPT体制を損なう危険性がある(リフレイン)。 Q10.核兵器禁止条約は、核兵器の使用を完全に違法化するものですから、核兵器を非正当化し、核兵器をより使いづらいものとすることで、核軍縮への政治的圧力になるのではないですか。つまり、核不拡散・核軍縮の両面で、NPTの不十分なところを補強するといえませんか。 A10.核兵器が法的に禁止されても、それを破って核を使用する国があるかもしれない。化学兵器が禁止されても、現実に化学兵器が使われているようにだ。 Q11.たしかに法的に禁止されても破られる危険性は残ります。しかし、殺人罪が定められても殺人が完全になくなるわけではないからといって、殺人罪を定めない方がよいとはなりませんよね。核兵器禁止条約を批判する理由にはならないのではないですか。 A11.核兵器禁止条約には、検証の定めが不十分である。違反者が出てきたらどう対処するのか。その制度がしっかりとしていなければ、核兵器のない世界は維持できない。 Q12.検証が必要なのはその通りですね。核兵器禁止条約には核廃棄を国際的に検証する枠組みと筋道が定められていますよね。その詳細は今後、締約国会議で議論されていきます。核兵器禁止条約に加わって、強力な検証制度作りの議論に参加していった方がよいのではないですか。 A12.諸国間の信頼が醸成され、安全保障環境が整わなければ、核兵器禁止条約には参加できない。それよりも、核削減、透明性の拡大、検証措置の強化など、個別措置を着実に行っていく。 Q13.核兵器禁止条約に参加したうえでそうした個別措置を行っていけばいいと思いますけれど。 A13.核兵器禁止条約は、安全保障の現実を無視している。安全保障上の現実を考慮せずに作られた条約だ。 Q14.そんなことはありませんよ。核兵器禁止条約が、核兵器が使用された場合にもたらされる破滅的な人道上の影響と、地球規模でもたらされる壊滅的な被害について憂慮して作られたのです。核兵器禁止条約は、核兵器がもたらすまさに安全保障上の影響を考慮して作られたとはいえませんか。 A14.我が国のように、核兵器の脅威にさらされている国は、核兵器禁止条約に入れない。 Q15.世界に「核兵器の脅威にさらされていない国」なんて、あるんですか。核兵器がひとたび使われれば、核戦争となります。核戦争に勝者などいません。世界全体が壊滅的な被害を受け、人類の生存自体が脅かされるのですよ。 A15.核兵器のない世界という目標は共有している。アプローチの違いだ。一気に核兵器禁止条約ではなく、NPTの下で、一歩ずつ核軍縮を進めていく。 … Continue reading

2018/12/02 · Leave a comment

核兵器禁止条約あるある(FAQ) その1「我が国はアプローチが違う」

Q1.なぜ日本政府は核兵器禁止条約に署名・批准しないのですか? A1.核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約は、核抑止力を否定するものです。米国の核抑止力がなければ、日本の安全が保てません。 Q2.「日本や米国には核兵器による抑止力が必要だ。でも北朝鮮は完全に非核化すべきだ。」核兵器を持っていい国と悪い国がある、という議論は通用しないのではないですか。 A2.核不拡散条約(NPT)体制は、核兵器の保有が許される国を5カ国(米ロ英仏中)に限定し、その他の国々の核保有を禁じています。世界はこのルールを守るべきであり、北朝鮮はNPTに戻るべきです。 Q3.しかし、ある国に核兵器保有の正当性を認めたら、他の国も「我々も持ちたい」と考えるのではないですか。実際、NPTがありながら、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮など、核保有国は増えてきましたよね。 A3.たしかにNPTには問題もあります。しかし、核不拡散はおおむね機能してきましたし、核兵器国は核軍縮の義務を負い、それを履行してきました。 Q4.NPTの下で核兵器国が核軍縮を行ってきたといいますが、冷戦終結から約30年たつというのに、いまだに世界には1万4000発以上の核兵器がありますよね。冷戦時代と同じように、即時発射態勢に置かれた核兵器も少なくありません。核兵器国の核軍縮努力が十分だったといえますか。 A4.たしかに核兵器国の核軍縮には不十分な面もあります。しかし、だからといって、核兵器国との対立をいたずらに煽ることは、核軍縮にとってプラスであるとは思えません。核兵器禁止条約ができたことで、核兵器国と非核兵器国の溝が深まっています。 Q5.ですが、核兵器国の善意と自発性に頼っていて、果たして核兵器の廃絶が達成できるのですか。広島・長崎への原爆投下から73年もたっているのですよ。それでまだ1万4000発ある。核兵器禁止は時期尚早といいますが、いったいいつまで待てというのですか。 A5.粘り強くやるべきです。日本政府は、米国など核兵器国の協力も得ながら、粘り強く核兵器廃絶を求めています。日本提出の国連総会決議は、じれったいと思われるかもしれませんが、そのようなアプローチにより、核兵器国の賛同もえて、多くの国に支持されています。 Q6.しかし日本提出の国連総会決議は、核兵器国の賛同をえることが自己目的化して、過去のNPT会議の核軍縮合意の文言を薄めたり弱めたりしているではないですか。核兵器国による核軍縮の約束を弱める役割しか果たしていないではないですか。 A6.現実問題として核軍縮というのは、核兵器国が実施しなければならないことです。核兵器国が拒絶しているものを無理矢理やらせようといったって、無理があります。 Q7.しかし今年の場合、米国は、NPTにおける核軍縮の義務を定めた条項(第6条)に言及することも嫌だといって、日本決議に賛成しませんでした。核兵器国の協力を得るといいつつ、賛同を得られていないじゃないですか。 A7.確かに今年米国は棄権しましたが、核兵器国として英国1カ国は賛成しました(汗)。 核兵器国は、自らが約束してきたはずの核軍縮を実行できない理由として、「安全保障環境が厳しい」ことを挙げています。実際、国際的な安全保障環境は厳しい。その点はある程度理解しなければなりません。 Q8.「安全保障環境が厳しい」からといって核軍縮をしなければ、核兵器の脅威は減らず、結局「安全保障環境は厳しい」ままで、何も状況は改善しないのではないですか。 A8.実際に国際的な安全保障環境が厳しいことは事実です。それは、日本を取り巻く環境についてもそうです。 Q9.「国際的な安全保障環境が厳しい」から、核軍縮は進められないし、核兵器禁止条約は支持できない、ということなのですか。 A9.我々は「安全保障環境が厳しい」ということを、核兵器国が核軍縮をしない口実として認めるつもりはありません。 Q10.そもそも日本は、核兵器廃絶を求めているのですか?国際的な安全保障環境が厳しい以上、核抑止力は手放せない、というふうに言っていったら、日本も米国も北朝鮮も、核兵器を手放せませんよね。核兵器なくす気、あるんですか。 A10.日本は、唯一の戦争被爆国であり、核兵器のない世界を求めています。それは確かです。しかし、核兵器廃絶という崇高な理想があろうとも、現実の安全保障環境が厳しい限り、粘り強いアプローチで進んでいくしかないです。核兵器禁止条約は、最終ゴールであっても、今日日本が参加できるものではない。 Q11.では、核兵器禁止条約を最終ゴールとして、そこに至るまでに、日本は、どうやって核抑止力への依存を減らしていくつもりなのですか。報道では、米国が核兵器の先制不使用政策を検討していたときに、日本政府はそれに反対したと言われていますね。 A11.今日の日本を取り巻く安全保障環境を現実的に考えると、核兵器の先制不使用という政策によって日本の安全が保たれるかどうかは、疑問無しとしません。 Q12.核兵器の先制不使用にも反対だったら、どうやって核兵器をなくすんですか。 A12.粘り強く、核兵器国とも協力しながら、一歩ずつ進めてまいる所存です。 Q13.ほんとうに核兵器をなくすつもりがあるのですか。 A13.核兵器のない世界という究極の目標に向かって、粘り強く一歩ずつ進めていくのが我が国のアプローチです。 ・・・というようなやりとりを何十年も繰り返した結果、この人たちの言うことを真に受けていたらいつまでたっても核兵器はなくならない。だから、核兵器は「絶対悪」であるという規範を作ることにより、核軍縮に新たなムーブメントを起こさなければいけないと考え、私たちは2007年にICANを結成し、行動し、昨年核兵器禁止条約を作り上げたのです。

2018/12/02 · Leave a comment