川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2018.3] 核兵器は必要で正当?

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核兵器は必要で正当?  核兵器禁止条約の成立とICANのノーベル平和賞受賞を受け、国会ではいつになく核軍縮の議論が続いている。気になるのは、開き直って核兵器を肯定する政府の物言いだ。  安倍首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」ためには「通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠」と述べた(1月26日参院本会議)。 河野外相は日本が核兵器禁止条約に入らない理由として同条約が「米国による抑止力の正当性を損う」ものだからとしている(17年11月21日ブログ)。たしかに核兵器禁止条約は核兵器を非正当化するものだ。だがこれに対して被爆国の政府が核兵器の「正当性」を訴えることはいかなる意味を持つか。今日日本が核抑止に依存する政策をとっているのは現実だが、その依存をどう減らしどう脱するかという意識が欠落している。(川崎哲、ピースボート)

2018/03/26 · 2 Comments

AERA「現代の肖像」で紹介されました

本日(3月12日)発売の週刊誌『AERA』(3月19日号)の「現代の肖像」のコーナーで紹介されました。ライターの山岡淳一郎さん、写真の高井正彦さんに、この数カ月間たいへんお世話になりました。核兵器廃絶や平和のための活動をするにあたっての考え方や、学生時代から今日までのことなどを、いろいろとインタビューを重ねてまとめてくださいました。自分で論評するのは小恥ずかしいので、気になる方は是非お買い求めになってください。こちらから。

2018/03/12 · Leave a comment

米朝が非核化交渉へ?今こそ核兵器禁止条約の出番だ

北朝鮮の金正恩委員長が米国との対話を提案し、韓国が米国に伝達、トランプ米大統領がこれに応じたとのニュースが昨日流れた。 北朝鮮が非核化の用意があるといっても信用できない、というのが大方の反応だろう。「対話のための対話に意味はない」「核開発の時間稼ぎではないか」といった指摘が多い。だが逆に、どういう非核化であれば信用できるのかを考えてみたい。 日本政府は、完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄が必要だと言っている。私もそう考える。問題は、何をもってすれば、完全かつ検証可能で不可逆な核廃棄であると信頼をもって言えるのか、ということだ。 核兵器禁止条約の交渉過程でも同じことが議論された。核兵器を解体するだけではダメで、核兵器の計画やインフラをすべて廃棄する。国際機関の検証の下で廃棄させる。不可逆性を担保する、すなわち再び核武装をできないところまで廃棄させる。これらを、一定の時間枠の中で行う。 こうした交渉の中で、核兵器禁止条約第4条は、核兵器を持つ国が同条約に加入すると言ってきた場合には「国際的な検証下で、一定の時間枠の中で、不可逆的な形で」核兵器を廃棄させるということを定めた。北朝鮮が本当に非核化すると約束した場合には、このことを適用して、核を放棄させる必要がある。 北朝鮮の言うことは「信用できない」と言い続けていても、状況は変わらない。むしろ、信用に足る核廃棄とはどのようなものか、検証制度のあり方も含めた条件をつくるべきだ。その条件を提示して、それをのめば一定程度信頼するが、それをのまないのなら受け入れない、というふうに交渉すべきだ。 なので、今必要なのは、米朝交渉が進んで北朝鮮が本当に非核化を飲むか飲まないかという段階にいずれ至るだろうことを想定して、「本当の非核化のために提示すべき条件」を作ることだ。国際的な検証体制のあり方がその鍵を握る。 北朝鮮の核廃棄を国際的にどのように検証するか。これは国際社会にとって極めて新しく、かつ、困難な課題だ。方法としては①北朝鮮に核兵器禁止条約に加入させ、その下で核を廃棄させる、②北朝鮮に特化した国際的検証制度をつくる、の二択がある。 核兵器禁止条約の下で検証する場合も、北朝鮮に特化した検証制度を作る場合でも、技術的な課題は基本的には同じだ。しかし、普遍的な核兵器禁止枠組みの中での検証を追求する方が、核兵器の普遍的違法化という理念からも、利害関係国の恣意的な運用を避けるという意味でも、ベターだろう。 つまり、今こそ核兵器禁止条約の出番である。同条約は、第4条で、時間枠をもった検証可能で不可逆的な核廃棄を定め、その詳細は今後締約国会議で議論して議定書として定めるとした。北朝鮮の核を廃棄させたい日本としては、この検証の議定書作りに参画し、北朝鮮を禁止条約に迎え入れる準備をすべきだ。 もちろん非核化合意に達するまでには長い道のりだ。米国はその間制裁は続けると言っているし、日本では「抑止力の強化が必要」という論調が強い。だが「抑止力」とは、すなわち攻撃するとの脅しのことだ。大事なのは相手の暴走を「予防」することである。脅しによる抑止は、予防策の一部に過ぎない。 北朝鮮に対する抑止力を強化するといっても、北朝鮮を攻撃して破壊するというような脅しによる抑止力をもちうるのは米国だけである。結局、米国頼みになるだけだ。米国は北朝鮮と直接に交渉していくわけだから、どこかで「これ以上は攻撃しません、脅しません」という手を打つことは避けられない。 米国の抑止力が不確かだ、という議論が高まっていけば、日本の中で、じゃあ日本にも独自の抑止力が必要だという声が高まって、やれ、核武装だとか米国の核を日本に配備し日本もその運用に関わるべきだといったことをいう人が出てくるだろう。ちょっと待て。日本は北朝鮮と核軍備競争をしようというのか。 つまり「相手を攻撃し破壊する力を持つこと(=抑止力)による安心感」にだけ頼って国の安全保障を追求していったら、際限ない軍備競争の悪循環に陥る。日本はそこに既に片足を突っ込んでいる。「相手の軍縮を国際的に検証することによる安心感」へと、少しずつでも、シフトしていかなければいけない。 軍縮の国際的検証が必要だと言うと、そんなの理想論だ、信用できない、という反応がすぐに返ってくる。たしかに軍縮の国際的検証には課題が多い。不完全なことはもちろん認める。だが、じゃあ軍事力のみが信用に足ると走っていったら、世界の核軍備競争は止められない。それが安全な世界か。 北朝鮮が非核化を言っても信用できない。それはそうだ。だが、だから米国の抑止力を強化せよ、と言い続けても、解決の道筋は見えない。だから北朝鮮の非核化を検証できる信頼に足る国際制度の構築を今から準備し、日本がそこにしっかりと関与する。日本が関与した国際的検証の下で北朝鮮を非核化させる。 北朝鮮が核兵器禁止条約に加入するのと引き替えに、韓国と日本も同条約に加入するべきだ。これにより、北朝鮮の核は国際的検証下で廃棄されることになる。一方、韓国と日本には核を配備しないこと、また、両国は北朝鮮に対する核攻撃を援助、奨励しないことが法的義務となる。フェアな取引だ。 北朝鮮、韓国、日本が核兵器禁止条約に加入する。同時に米国は北朝鮮に対して核兵器を含む攻撃をしないこと、体制を保証することを約束する。これらをベースにして、2005年9月に六者協議が合意したところの「北東アジアにおける持続的な平和体制」を追求すべきだろう。 (2018年3月10日、ツイッターで述べたことをまとめました)

2018/03/10 · Leave a comment