川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

板門店での米朝首脳会談に対するICANの声明

本日行われた板門店での米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長による事実上3回目の首脳会談について、私は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営委員として、以下の通りの声明をメディア各社に送付しました。 「両首脳によるこの歴史的な面会と握手は、平和に向けた重要な一歩です。しかし、この地域そして世界の運命をトランプ大統領と金委員長の2人の手にゆだねておくわけにはいきません。国際社会が関与し、核兵器禁止条約など国際条約を通じた道をとっていかない限り、朝鮮半島全体の包括的で検証可能な非核化は達成できません。」 「韓国の文大統領が朝鮮半島の平和と非核化に向けて続けている努力は、称賛されるべきものです。韓国は、自らの核兵器への依存を終わらせることによって、半島の非核化にさらに貢献できます。そして日本も、同様の努力をしなければなりません。」 参考:ICANツイッター 報道: June 30, 2019 UPI Trump steps into North Korea in historic DMZ visit, agrees to resume nuclear talks 2019.7.1 朝日新聞 非核化や「拉致」、進展に期待の声 米朝会談

2019/06/30 · Leave a comment

「日米安保条約は不公平で変えるべきだ」というトランプ大統領の発言をめぐって

「日米安保条約は不公平で変えるべきだ」というトランプ大統領の発言をめぐって 2019.6.30 川崎哲 昨日トランプ米大統領が、日米安保条約が「不公平」で「片務的」だから「変えるべきだ」とG20後の記者会見で述べた。私はそのことで朝日新聞の取材を受け、次のように引用されている。  国際交流NGO「ピースボート」共同代表の川崎哲さん(50)も、今回の発言が日米安保改定につながるとは思わないという。「米国が攻撃を受けた時、無条件で自衛隊を海外に送るには、確実に憲法を改正する必要がある。そのハードルは非常に高く、非現実的だ」とみる。トランプ氏は、日米安保が不公平だと日本政府に伝えたと話しているが、日本政府は否定している。双方の食い違いについて川崎さんは「日本政府は内心焦っているのだろうが、嵐が過ぎるのを待っているのでは」と述べた。 ここで述べたことの趣旨をもう少し説明しておきたい。 日米安保条約は、米国は日本が攻撃されたら日本を防衛すると約束する代わりに、日本は米国に基地を提供するという取り引きを基本としている。米国が攻撃されたら日本が米国を防衛するという義務はない。 日米安保条約が「不公平」だと米国側が主張するとすれば、(1)日本は米国を防衛するために兵力を出すべきだ、(2)日本は安保協力のためにもっと金を出すべきだということのいずれかまたは両方だということになろう。 そもそもトランプ氏は、2016年の大統領選当時、日本やNATO諸国など同盟国は「ただ乗り」するな、もっと負担せよと主張してきた。それは彼の「アメリカ・ファースト」の姿勢を象徴し、支持層にアピールした。そのため日本政府は、トランプ大統領が就任したとき、米軍駐留経費の負担増を求めてくるのではないか、また、対日本防衛の約束が揺らぐのではないかとおそれた。そこで安倍首相は、いち早く対トランプ「接待外交」を展開した。そして2017年2月の初のトランプ・安倍会談では、米側から明示的な財政負担増要求はなく、かつ、米国が日本を(核・通常兵器を含む)軍事力で防衛するという約束が明確に再確認されたので、日本政府は胸をなで下ろしたわけだった。 だがその後、日本政府が米国の武器や兵器システムを大量に購入することを約束させられてきた実態が明らかになってきた。北朝鮮が核・ミサイル実験をやめたにもかかわらずイージス・アショアを導入しようとしているのは、その象徴的な例だ。 つまり、「もっと兵を」「もっと金を」という二つの可能性のうち、「もっと金を」については実態が進行している。今回のトランプ氏の発言は「さらにもっと買え」ということかもしれない。あるいは、貿易問題など他の政治課題と絡めてのことかもしれない。 では「もっと兵を」についてはどうか。振り返れば、1991年の湾岸戦争以来、日本が米国の世界的作戦行動にもっと軍事的に貢献せよという主張は、米国の政府や政府系識者らによって一貫して展開されてきた。この圧力の中で日本の自衛隊は1992年から海外展開を始め、その範囲や役割は拡大されてきた。この動きの推進勢力は、日本の憲法9条を日米安保協力の「足かせ」として批判してきた。9条は明文改憲されいないまでも、アフガンやイラク戦争を経て自衛隊の海外任務は拡大し続け、ついには2015年の安保法制で集団的自衛権まで容認されるところまできた。 つまり、一定の条件の下で日本は米国に「兵を出す」制度は作られた。しかし、集団的自衛権はまだ発動されていない。米国が日本に「もっと兵を」という場合、たとえばそれは、今後イランとの戦争が始まった場合に、日本は安保法制を適用して兵をイランに出せということなのか。 2015年の安保法制は、(それじたいが違憲であるという見方もあるが)米国が攻撃されたときそれが日本国にとって「存立危機事態」ならば自衛隊は武力行使できるという内容だ。米国が仮に、それでもなお不満である、米国が攻撃されたら日本は「自動的に」集団的自衛権を行使して参戦せよと言ってきたらどうなるか。そのような要求に日本が仮に応じようとするならば、確実に憲法9条を変えなければならない。そして、安倍自民党が提唱するところの「9条2項を変えて自衛隊を明記する」どころではなく、9条1項にある「武力によって国際紛争を解決しない」という戦争放棄の原則じたいを変えなければならない。私は、そんなことをすべきではないと私自身考えるのみならず、日本国がそのような意思決定に達するということはまったく非現実的なシナリオだと思う。 9条改憲論者である安倍氏は、トランプ大統領の言葉を利用して、「日本は米国とより対等なパートナーになるためにも、憲法9条を変えましょう」と主張しようと思うかもしれない。しかし今のところ、そのような素振りはない。これが憲法論議とリンクされれば、「自衛隊を書き込むだけ」の改憲では済まなくなることが分かっているからかもしれない。 いずれにせよ今回のトランプ発言は、日米安保について、二つの根本的な問題を浮き彫りにした。一つは、日米安保を強化すれば米国が日本が提供する「抑止力」が高まり、日本の安全はより確かになるという日本政府の主張の土台が揺らいだということだ。安保法制を強行する際にも、辺野古の基地建設を推し進める際にも、日本政府はこれで米国は日本を確実に守ってくれるようになると言ってきた。しかしトランプ氏の言動をみれば、米国が「日本の貢献はまだ不十分だ」といって、日本のためにリスクある行動をとらない可能性があることは明らかだ。 もう一つは、日米安保条約は「変わりうる」ということである。いかなる条約も、当事国が真剣に求めれば変えることはできる。日本の政府や人びとは、日米安保条約を不磨の大典のごとくに扱ってきた。私は、核兵器廃絶運動の中で、日米安保条約の下でも核兵器禁止条約に加入することは可能であると言ってきた。日本は米国と他の形での安保協力はするけれども核兵器には一切関わらないということを決めて、関連文書に書き込めばいいだけなのだから。基地問題も同様である、日本政府が、とりわけ沖縄をはじめとする基地周辺住民の被害を真剣に受け止めているのならば、条約や関連協定の改正を求めることは可能である。 トランプ氏の挑発に乗って、では日米安保条約を議論しましょうという話を始めると、米側から膨大な要求を受けるのみならず、憲法や基地といった巨大な箱のふたを開けることになるから、日本政府としてはそんなことはしたくない。そこでトランプ発言を真に受けず「嵐が過ぎる」のを待っているというのが、政府の今日の姿勢だろう。しかし、嵐は過ぎないかもしれない。トランプ大統領にとって、次の選挙戦が近づいているからである。そうなってくると日本政府は、これまでもそうしてきたように、国民に見えない裏で約束をして、そのかわり表ではそういう発言は控えてねという説得工作に入る可能性がある。だからこそ私たちは、政府が何を米国に約束しているのかを常に監視して、情報公開をさせていかないといけない。 (PDFはこちら)

2019/06/30 · Leave a comment

[2019.6] 核軍縮の「環境作り」?

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核軍縮の「環境作り」? NPT準備委で米国は核軍縮の「環境作り(CEND)」に取り組むグループを立ち上げると発表した。核兵器国が核兵器禁止条約を頑なに拒否するなか、核軍縮を少なくとも議論する姿勢を示したことは評価できる。 だが懸念も多い。まず「環境が整わなければ軍縮できない」という言い訳に使われないか。核軍縮は核兵器国がNPTの下で負っている、環境いかんに拘わらず履行すべき法的義務だ。米政府主催のサイドイベントでは、これまでの義務や約束を反故にするようなものであってはならないとの注文が相次いだ。また核兵器国がNPTの外にグループを作ることがNPT形骸化につながるおそれもある。 元来、核兵器の非人道性の認識を広め核兵器禁止条約の締約国を増やすことは、まさに核軍縮を促す環境作りになる。グループ参加国にはその点も忘れないでもらいたい。(川崎哲、ピースボート)

2019/06/25 · Leave a comment

ピースボート平和と音楽の船旅~明子さんの被爆ピアノとともに

今夏ピースボートは、8月6日と9日の原爆の日にそれぞれ広島、長崎に寄港する船旅において、一般社団法人HOPEプロジェクトとの協力のもとで、「明子さんの被爆ピアノ」と「パルチコフさんの被爆バイオリン」を広島から船に乗せ、各地で演奏会を行います。 http://peaceboat.org/28324.html ピースボートは2008年、広島・長崎の被爆者のみなさんの声を世界各地に届ける活動を始めました。しかし、10年以上が経ち、自らの体験を語りながら旅のできる被爆者の方は本当に少なくなってしまいました。「被爆者なき時代」が、もう目前に迫っています。一方、原爆投下後74年の月日は、その被害を知らない世代の関心や理解を薄めています。そんなとき、私たちは被爆遺品である「明子さんの被爆ピアノ」と「パルチコフさんの被爆バイオリン」に出会いました。 「明子さんの被爆ピアノ」の持ち主だった河本明子さん(当時19歳)は8月6日、建物疎開の作業中に被爆しました。家までたどりつくも、翌日「急性放射能障害」で亡くなり、ご両親によって荼毘に付されました。彼女が残した21冊の日記には、日々ピアノを練習したことやショパンが大好きだったことなどが事細かに書かれ、明子さんのピアノはいまも、そのメッセージを運ぶように優しい音色を奏でています。「パルチコフさんの被爆バイオリン」は、ロシア革命を逃れて来日した広島女学院の音楽教師、セルゲイ・パルチコフ先生の持ち物でした。 被爆し、修復され、また再び優しい音色を奏でる2つの楽器の力を借り、あの日キノコ雲の下で何が起こったのかを一緒に想像し、核兵器のおそろしさを感じ、平和の大切さや命の尊さを考える機会をつくりたいと考えています。本プロジェクトには、広島市からの後援もいただきました。 ◆本プロジェクトについて、6月20日に広島で、同24日に長崎で記者会見を行います。詳細はお問い合わせ下さい。(03-3363-7561 ピースボート 担当:渡辺里香、松村真澄) ◆クラウドファンディングでのご支援を呼びかけています。(6月末まで!あと約20万円です。よろしくお願いします!) 今年8月のクルーズには、最初の寄港地・広島から最終下船地の神戸(18日間)まで、各地で演奏会を行います。航海中の演奏家の移動費、調律費用、ドキュメント映像制作など、この企画を有意義なものとするため、みなさんのご支援を、心よりお待ち申し上げます。 こちらから:https://camp-fire.jp/projects/view/143571 ◆口座振り込みでのご支援金も歓迎です。 ◇郵便振替◇ 00180-3-177458 加入者名 ピースボート ※通信欄は「被爆ピアノ」とご記入ください ◇ゆうちょ銀行◇ 支店〇一九(ゼロイチキュウ)店 当座0177458 口座名義 ピースボート ※お名前の前に、「ヒバクピアノ」とご入力ください 「平和と音楽の船旅~明子さんの被爆ピアノとともに」 http://peaceboat.org/28324.html    

2019/06/19 · Leave a comment