ピースボートが「戦争廃絶への功労賞」に選ばれました
ピースボートはこのたび、世界的な平和団体「ワールド・ビヨンド・ウォー」による「戦争廃絶への団体特別功労賞2021」を受賞することになりました。9月13日、ワールド・ビヨンド・ウォーが発表しました。たいへん光栄なことです。 ワールド・ビヨンド・ウォーは、戦争と戦争のしくみそのものを世界からなくすために2014年から活動している米国を拠点とする世界的な平和団体です。「戦争廃絶への功労賞」は、戦争廃絶をめざし活動している人々を表彰し支援するために今年から設立されました。戦争廃絶の目的を意図してそれを効果的に推進し、戦争の火種や戦備を減らし、戦争の文化を縮小させることに成功した教育者や活動家に贈られます。 ワールド・ビヨンド・ウォーの公式ウェブサイト(こちら)では、ピースボートの受賞理由をこのように説明しています。 「ピースボートは、世界的な平和文化の構築に長年携わり、非暴力での紛争解決や武装解除について世界各地で取り組んできました。ピースボートは、エコなクルーズ船の計画を進めるなど、平和と人権や環境の持続可能性とのつながりにも着目し取り組んできました。」 「戦争がなくなるとすれば、それはピースボートのような団体が、考え活動する人々を育て動かし、暴力に代わるものを見出し、戦争の正当化や許容から世界の意識を変えてきた活動が大きく寄与した結果でしょう。ワールド・ビヨンド・ウォーは、第一回目のこの賞をピースボートに贈ることを光栄に思います。」 今回の受賞では、ピースボートが海に浮かぶ学びの空間として育んできた独自の平和教育と平和構築活動が評価されました。ピースボートが「おりづるプロジェクト」を通じて、広島や長崎の被爆者の証言を世界に伝える活動をしてきたこと、また、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の一員として核兵器廃絶に取り組んできたことも、授賞理由に挙げられています。 ピースボートのホームページ(こちら)には、受賞にあたっての吉岡達也共同代表のコメントを掲載しています。そこにもあるように、9/11の同時多発テロをきっかけに引き起こされた「対テロ戦争」から20年という節目にこの賞が発表されたことは感慨深いです。当時から私たちは、戦争では問題は解決しない、非暴力による平和構築を追求すべきだと訴えてきました。そして「世界は9条をえらび始めた」という標語と共に、日本国憲法9条の「軍事によらない平和構築」という理念を世界に広げるため、2008年に「9条世界会議」を開催しました。ピースボートの船旅の活動自体が、非軍事の平和構築の一つのモデルだと考えています。今回の受賞を機に、さらに活動を前に進めたいと思います。 「戦争廃絶への功労賞2021」の授賞式は、2021年10月6日(水)日本時間午後9時から行われます。(こちら) 授賞式は英語で進行されますが、日本語への通訳もあります。なお、ピースボートがこのたびいただくこととなった「戦争廃絶への団体特別功労賞2021」のほかに、「デビッド・ハートソー戦争廃絶への個人特別功労賞2021」および「戦争廃絶への2021年功労賞」の2つの賞が今後発表され、上記10月6日の授賞式は、3者合同の授賞式となる予定です。
[2021.9] 先制不使用の要請
被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 先制不使用の要請 8月9日、ペリー元国防長官など米国の元高官・専門家らが、バイデン政権が検討している核の先制不使用政策に日本が反対しないよう求める書簡を菅首相および与野党党首に送った。書簡は、日本はオバマ政権が先制不使用政策を採択するのに反対し、今日もまた、国会答弁等で同政策に反対を表明していると指摘。核廃絶を掲げる日本が「この小さな、しかし重要な一歩」に反対するのは悲劇的だと批判している。 さらに、先制不使用政策をとると抑止力の「弱体化」をおそれた日本が核武装する恐れがあるとの強い懸念が米国内にあるという。なんと不名誉なことか。 バイデン政権の核政策見直しは来年1月、NPT再検討会議の頃までに完了する見込みだ。日本政府は、日本の非核三原則は不変であり、米国が先制不使用政策をとることはNPT合意にも沿うもので歓迎する旨、明確に発信すべきだ。(川崎哲、ピースボート)
「持続可能なツーリズム」誌にピースボートについての論文を寄稿しました
このたび「持続可能なツーリズム」をテーマにした学術誌Journal of Sustainable Tourismに、ピースボートをケーススタディとして取りあげた論文を執筆し寄稿しました。タイトルは「波を起こす:ツーリズムを通した持続可能な平和のモデルケースとしてのピースボート(Making waves: Peace Boat Japan as a model of sustainable peace through tourism)」です。長くお世話になっているシドニー大学のリンダ・アン・ブランシャードさんと、ピースボートの同僚の畠山澄子さんと私の3人で共同執筆したものです。 この論文では、ピースボートの国際学生プログラム、日韓クルーズ、地球大学、「ヒバクシャ地球一周 証言の航海(おりづるプロジェクト)」などの取り組みに触れながら、ピースボートの取り組みは「ツーリズムを通じて持続可能な平和をつくりだすこと」だということを論じました。船旅でバックグランドの異なる人が出会い交流することや、観光地といわれる場所にも戦争の歴史や構造的な暴力の問題があることについて学ぶ場を作ることは、単に戦争のない社会というだけでなく、より深い意味での平和に貢献しているはずだということを論じています。ツーリズムと平和の関係、あるいは平和教育の方法論については、リンダさんが主に議論を展開してくれました。その上で畠山さんと私とで、ピースボートの長い歴史と幅広い取り組みの中から本論文にふさわしいケースを厳選して取り出し、組み立てました。それを文章に落とし込んでいく作業は、畠山さんがリードしてくれました。 論文はこちらから。 Journal of Sustainable Tourism Making waves: Peace Boat Japan as a … Continue reading
国防総省や軍事企業からお金をもらって「安全保障政策」を提言?――米シンクタンクの実態に迫る報告書
米国の政策に大きな影響を及ぼしているシンクタンクの多くが、米国政府と軍事企業から多額の資金援助を受けて活動している。米国の上位50のシンクタンクに対して、10億ドル以上もの資金が米国政府や軍事企業から提供されている。――このことを明らかにした国際政策センター(Center for International Policy)の報告書(2020年10月)の要旨を、このたびピースボートが日本語に訳しました。 この報告書によれば、米国政府で最大の資金援助を行っているのは、国防長官府、空軍、陸軍、国土安全保障省、国務省であり、軍事企業で最大の資金援助を行っているのは、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ボーイング、ロッキード・マーティン、エアバスの各社です。資金の受領額が多いのは、ランド研究所、新アメリカ安全保障センター、新米国研究機構の3組織です。 シンクタンクの多くはこうした資金受領について情報公開しておらず、「利益相反」が隠されている可能性があると、報告書を執筆したベン・フリーマン氏は指摘しています。米国防総省や軍事企業から出資を受けたシンクタンク所属の専門家が、議会証言や調査研究で、防衛費の増額や武器売却の必要性を宣伝する可能性があるからです。この報告書は、結論として、シンクタンクが資金援助元に関する情報を公開することを法的に義務づけるべきだと勧告しています。 要旨の日本語訳はこちらのリンクからよむことができます。 シンクタンクと軍事企業のつながりについては、ICANが、核兵器製造企業からシンクタンクへのお金の流れを明らかにしています(こちらをご参照ください)。 日本においても、武器の購入や兵器の研究開発の必要性を訴える”専門家”や彼らが所属している組織が、どういうところからお金をもらっているのか、注目していく必要があるでしょう。
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