川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

米朝会談の頓挫-国際的な核軍縮枠組みを今こそ

第2回米朝首脳会談に合わせてハノイに来ています。昨年6月のシンガポールでの初会談で朝鮮半島の平和と完全な非核化という目標が合意されていたことから、今回の会談では、その実施のための具体的な行動計画が合意されることが期待されていました。しかし、ハノイでの会談は予定よりも切り詰められ、合意のないまま頓挫するという結果に終わりました。 これは大変に残念なことですが、驚きではありません。イランとの核合意やロシアとのINF条約など、米トランプ政権はこれまで、核兵器を規制する数々の国際枠組みから離脱してきました。つまるところ今回の結果は、ドナルド・トランプと金正恩という二人の不安定な指導者に核兵器交渉を任せておくことの限界を露呈したのです。今必要なのは、より普遍的な、国際社会に根ざした枠組みを再活性化することです。 核兵器禁止条約をはじめ、包括的核実験禁止条約や核不拡散条約など、国際社会には核兵器を禁止また規制する多国間の枠組みが存在します。米朝二国間交渉の頓挫を受け、改めて、これら多国間の枠組みの活性化が緊急に必要であることが浮き彫りになりました。 元来、米朝交渉は韓国の文在寅 大統領のイニシアティブで始まったものといえます。韓国や中国の役割はこれまで以上に大きくなりますし、昨年来シンガポールやベトナムが会談のホスト国となってきたことに見られるように、ASEAN諸国の働きも重要です。国連の枠組みが重要であることはいうまでもありません。日本もまた「様子見」ではなく、多国間の核軍縮枠組みを強化していくために積極的な役割を果たさなければなりません。 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、核兵器禁止条約をはじめとする多国間枠組みに基づいて朝鮮半島を非核化するロードマップを提示してきました。今こそこのようなアプローチが必要です。 会談は頓挫したとはいえ、トランプ大統領は対話を続ける姿勢を示しました。それは、せめてもの救いです。対話を継続させ、一昨年まで北東アジアを覆っていた核戦争の脅威の再来を絶対に防がなければなりません。そのためには私たち自身も市民社会として声を上げ、国際的な核軍縮交渉を前進させていかなければなりません。 朝鮮半島の完全な非核化のためには、北朝鮮と韓国の双方が核兵器禁止条約に加入するのがもっとも確実な道です。そこに日本も加わって、北東アジアを非核化すべきです。北朝鮮に対しては、完全で、期限を区切った、検証の下での不可逆的な核廃棄を妥協なく迫っていくべきです。と同時に、韓国や日本は、米国の核政策に協力することをやめ、この地域に核なき安全保障を築くために努力すべきです。ヒロシマ・ナガサキから74年。私たちが核兵器の脅威を忘れてしまったなら、同じ悲劇がまた繰り返されることになります。 ●ICANのステートメントはこちら ●Newsweekに寄稿した論説はこちら(Akira Kawasaki, “The Trump-Kim Reality TV Show Is Over—The World Needs to Get Serious About Denuclearization”, Newsweek Opinion, March 1, 2019)

2019/02/28 · 2 Comments

今年8月のピースボート地球大学「特別プログラム」、英語で学ぶ学生を募集中

ピースボートでは毎年一回、アジアを中心に世界各国の学生が集まり英語で学ぶ「地球大学・特別プログラム」を行っています。今年は8月の約3週間を使い、日本一周を中心とする東アジア・クルーズで「ともに築く平和で包摂的なアジア」をテーマに実施します。8月6日に広島、9日には長崎に寄港する航路です。私もコーディネーターの一人として乗船して核兵器問題やICANの活動についてお話しするほか、ナビゲーターとして、アレクシス・ダデンさん(歴史学者、コネチカット大学教授)、秋林こずえさん(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授)ほかの皆さんをお迎えする予定です。 詳しくはこちらをご覧下さい(日本語での案内、英語での案内)。第一次締め切りは3月31日ですので、多くのご応募をお待ちしています。

2019/02/18 · Leave a comment

[2019.2] 議会のイニシアティブ

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 議会のイニシアティブ 核兵器禁止条約をめぐり各国の議会が活発に動いている。NATO加盟国であるイタリア、ノルウェー、アイスランド、オランダでは禁止条約加入の条件や影響を議論することが議会決議で決まった。 そのうちノルウェーでは政府が条約加入に否定的な報告を出したが、NGOが反論を提示し議論は続いている。 NATOではないが近い立場のスウェーデンやスイスでも同様の動きがある。スイスでは政府が条約加入に否定的な立場をまとめたが、議会は上下院ともに条約に加入せよとの決議を上げた。 オーストラリアでは野党・労働党が政権をとったら禁止条約に加入するとの方針を決定した。ICANの働きかけの成果だ。スペインでは新政党ポデモスが禁止条約署名を含む政策合意を政府と結んだ。核の傘下の国々での動きである。比べて日本の国会のなんと静かなことか。(川崎哲、ピースボート)  

2019/02/17 · Leave a comment