川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2019.12] 過去の合意はどこへ?

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 過去の合意はどこへ? 今年の国連総会第一委員会で日本が提出した決議案は、米ロに核削減を求めず、核兵器の非人道性について「深い憂慮」の表現を削除するなど後退が甚だしいものだった。だが最大の問題は、過去のNPT会議での核軍縮合意への言及をほとんどなくしたことだ。かわりに「未来志向の対話」を掲げ、核軍縮と安全保障の関係を議論しようという。 核軍縮が諸国の安全保障に資するという議論なら結構だ。しかし往々にしてこれは、安全保障環境が悪いから核軍縮はできないという言い訳に使われる。米国が提唱する「核軍縮の環境作り」にもそのような含意がある。 核軍縮はNPTが定める法的義務であり、環境が整ってからやればよいというものではない。来年の再検討会議を前に核兵器国に義務履行を求めるべきところ、逆にそれから逃れる助け船を出すかのような決議だ。(川崎哲、ピースボート)

2019/12/10 · Leave a comment

今夏のピースボート地球大学「ともに築く平和で包摂的なアジア」報告書アップ

この8月、ピースボートでは日本一周と東アジアを巡るクルーズにおいて地球大学「特別プログラム」を実施しました。英語のみで行うこのプログラムには今回、日本、台湾、韓国、マレーシア、アメリカ合衆国、フィリピン、タイ、中国本土から35名の参加がありました。東京外国語大学をはじめ日本や韓国の諸大学との提携による本プログラムもすっかりと定着してきました。今年は「ともに築く平和で包摂的なアジア」をテーマに、国連が定める持続可能な開発目標16(平和で公正な社会の実現)をどのようにアジアで実現していくかといったことをテーマに活発な議論がなされました。私自身は「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー」や「平和と音楽の船旅~明子さんの被爆ピアノとともに」などのプロジェクトが同時期に重なっていたため、プログラムの多くの部分を同僚の畠山澄子さんを中心に進めてもらいました。英語と日本語でウェブレポートならびに報告書が完成していますので、どうぞご覧ください。こちらから>日本語・English

2019/11/30 · Leave a comment

[2019.11] ムクウェゲ氏の広島訪問

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ムクウェゲ氏の広島訪問 2018年にノーベル平和賞を受賞したコンゴの婦人科医デニ・ムクウェゲ氏が10月に広島を初訪問した。コンゴでは20年以上にわたる紛争で600万人もの犠牲者が出ている。携帯電話用のレアメタルなど鉱物資源をめぐる争いがその根幹にある。紛争の中では性暴力が組織的に行われており、その実態は凄惨だ。ムクウェゲ医師はこれまでに5万人以上の被害者を診てきた。 広島で被爆者と面会し資料館を回った医師は、このような人道にもとる兵器を人々は「なぜまだ作り続けるのか」とくり返し問うた。講演会では「無関心こそ破壊的である」と述べ、それがコンゴと広島をつなぐ共通の課題だと訴えた。また、広島原爆に使われたウランがコンゴ産だったことを指摘し、コンゴで紛争が続くことは大量破壊兵器の原料が無制御のままとなることであり世界への脅威だと警告した。(川崎哲、ピースボート)

2019/11/18 · Leave a comment

核兵器製造企業も!-幕張メッセでの武器見本市は大問題

武器見本市「DSEI Japan 2019」が11月18日から幕張メッセで開催されることについて、たいへん憂慮しています。この見本市の日本での初開催には、イギリスなどの軍需企業が日本をアジアへの武器輸出の拠点にしようという狙いがあるといわれています。このような武器見本市の開催は、国際紛争を解決する手段として武力による威嚇または武力の行使は「永久にこれを放棄する」とした日本国憲法9条の精神に根本的に反するものです。 そればかりか出展企業の中には、さまざまな非人道的な行為に加担しているとみられる軍需企業が多数含まれています。とりわけ、ロッキード・マーティン、エアバス、BAEシステムズなど核兵器の製造に関与している企業が出展していることを指摘しなければなりません。 2017年に国連で成立した核兵器禁止条約は、いかなる核兵器の使用も国際人道法に反すると断じています。それは、広島と長崎の被爆者たちが70年以上訴えてきたことでもあります。今日、世界の多くの銀行が、核兵器など非人道兵器の製造企業から投資を引き揚げ始めています。こうしたなか、被爆国である日本において、武器見本市が何の制約もなく堂々と開催されることは、世界の動きに逆行するものであり、見過ごすことはできません。 幕張メッセでは2008年5月に「9条世界会議」が開催され「武力によらずに平和を作る」ための理念と行動が確認されました。いま必要なのは、武器ではなく、平和外交のための知恵と国際法の強化です。 2019年11月17日 ピースボート共同代表、ICAN国際運営委員 川崎哲 【参考】 DSEI Japan 2019の問題点について詳しくは、岩波書店『世界』12月号掲載の杉原浩司「武器見本市という憲法的不祥事」参照。

2019/11/17 · Leave a comment

合意の反故に手を貸し、非人道性の表現弱めるー日本の「核廃絶」国連決議案の問題点

国連総会第一委員会に、日本政府が今年も核兵器廃絶を掲げた決議案を提出しました。「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」と題するこの決議案(10月21日付、L.47)は、日本がこれまで毎年出してきた決議案とは形式も内容も大きく異なるものとなっています。これまでは、過去の核不拡散条約(NPT)再検討会議の合意事項を再確認することを基本とするものでした。しかし、今年の決議案は過去の合意事項を列記することをほとんどせず、核軍縮の限られた一部の課題を「共同行動の指針」として掲げています。そして、核軍縮の前進のために「未来志向の対話」の必要性を強調。核兵器廃絶には「さまざまなアプローチ」があり、それゆえ対話を通じた諸国間の信頼醸成が必要だというロジックです。しかし、核兵器禁止条約について明示的には言及されていません。今年の決議案は核軍縮に焦点を当て核不拡散や原子力平和利用についてはほとんど触れられていませんが、北朝鮮の核・ミサイル問題については大きく取り上げられています。 この決議案については、しんぶん赤旗が「日本の核決議案 記述が大幅後退」(10月21日付)と報じ、また、共同通信配信の記事が東京新聞(「日本政府の核廃絶決議案が判明 人道上の「深い懸念」削除」10月24日付)ほか各紙に掲載されています。それらの記事にあるように、この決議案は、核兵器国による核兵器完全廃絶の「明確な約束」に言及していない、米ロに核削減を求める表現もない、核兵器の非人道性については「深い憂慮」という表現を削除している、核兵器禁止条約にも言及していない、といった問題があります。 以下に、この決議案の問題点を整理してみます。 問題点1 既存の核軍縮義務や合意を反故にしようとする核兵器国の動きに手を貸すものである。 ●前文4節で1995、2000、2010年のNPT合意の「履行の重要性を再確認」するとは言っている。しかし、それらに盛り込まれた合意措置を具体的に再確認することはしていない。 ●数ある既存の合意の中から、主文3(a)~(e)で、透明性、リスク低減、FMCT、CTBT、核軍縮検証などを選択的かつきわめて曖昧な形で確認しているのみである。 ●米ロ核削減の基本的な枠組みである新STARTへの言及がないし、そもそも米ロに核削減を求める表現がない。新STARTが延長また更新されるかどうかが米ロ核削減の将来を占う重要な鍵であるにもかかわらず、その問題への言及を避けている。 ●INF条約やイラン合意など核軍縮・不拡散の重要な条約・協定が次々と破棄され、国際法を通じた核軍備管理そのものが危機にあるという状況への懸念が、一切表明されていない。 ●米国は、第一委員会の一般討論で、核軍縮の「環境作り」(CEND)とか、「軍備管理の新時代(new era of arms control)」が必要であるとかいったことを盛んに強調している。ここには、米国は既存の条約で行ってきた核軍縮義務や合意に必ずしも縛られないのだという主張が見え隠れする。既存の合意内容を曖昧にし「未来志向の対話」を強調する今回の日本決議案は、核兵器国が既存の義務や合意を反故にする動きに手を貸すものとなりうる。 問題点2 核兵器がもたらす非人道的な影響への懸念が薄められている。 ●核兵器の非人道性に関する言及は、前文18節の「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の結末を認識する」(Recognizing the catastrophic humanitarian consequences that would result from the use of nuclear weapons)のみ。昨年は前文と主文の双方に非人道性への言及があったが、今年は前文のみである。 … Continue reading

2019/10/25 · Leave a comment

[2019.10] 米ロ核戦争の想定

被団協新聞の10月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 米ロ核戦争の想定 プリンストン大学のグループが米ロ間で起こりうる核戦争のシミュレーションを発表した。「プランA」という動画だ。米ロの核の配備、標的、威力の分析に基づいている。 想定では、欧州の戦争でロシアが核の警告発射を行い、これに在独米軍基地からの反撃があることで核戦争が始まる。最初はロシアとNATOが数百発ずつの核兵器を航空機等で撃ち合い、続いて互いの戦力拠点を潜水艦発射ミサイル等で攻撃し合う。さらにエスカレートすると、互いのもっとも人口の多い経済の中心の各30都市を一都市あたり5~10発の核兵器で攻撃する。 このような核戦争の拡大が数時間内に起き、合計9150万人が死傷、うち3410万人が死亡するとの予測だ。 研究グループは、米ロが核軍縮協定から離脱し新型核開発に乗り出している今だからこそこの予測を発表したとしている。(川崎哲、ピースボート)

2019/10/22 · Leave a comment

ピースボートがビリオン・アクト・アワードの「ベスト大学賞」を受賞しました

9月19日から21日にかけて、メキシコのメリダでノーベル平和賞受賞者世界サミットが行われました。これに合わせて、ピースジャム財団のビリオン・アクト・アワード2019の授章式が行われ、ピースボートは「ベスト大学賞」を受賞しました。ピースボートが地球大学プログラムやおりづるプロジェクトを通じて行ってきた核軍縮に関わる平和教育活動が評価されたもので、大変光栄に思います。メリダでのサミットには、ピースボートから畠山澄子さんが参加し、ICANやIPPNW(核戦争防止国際医師会議)のメンバーらと連携しながら現地で様々な活動をしました。その様子がピースボートのウェブサイトに報告されていますので、ぜひご覧ください(こちら。英語はこちら)。下の動画は、ピースジャム財団がピースボートに授賞するにあたり作成してくれた紹介ビデオ(2分間、英語)です。 Peace Boat from PeaceJam on Vimeo.

2019/10/16 · Leave a comment

[2019.9] ICANアカデミー

被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ICANアカデミー 8月、広島県とICANが共同で「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー」を開催した。核軍縮の人材育成プログラムである。15人の定員に対し80人以上が応募。5核兵器国と欧州、日韓豪などから熱心な若者が参加した。 広島・長崎を世界に伝えるというプログラムは多々あるが、一歩進んで核軍縮の仕事の力をつける場は多くない。このアカデミーはそうした実践力を重視した。広島では被爆者のお話を聞くことはもちろん、市民グループ、メディア、学校等における実践に学んだ。被爆地は実践的知見の宝庫でもある。さらに平和記念式典に来た各国の大使とも議論する場を設け、多様な国々の見方に触れ、対話のためのスキルを磨いた。 初回としてはまずまずの成功だ。世界的な軍縮教育のプラットホームとして定着するよう育てていきたい。(川崎哲、ピースボート)

2019/09/25 · Leave a comment

[2019.8] 対韓輸出規制の問題点

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 対韓輸出規制の問題点 韓国に対する半導体材料等の輸出規制が深刻な問題になっている。元徴用工問題に対する日本の事実上の報復だ。だが、植民地支配下での被害者が権利を求めているのであって、国家間の請求権は放棄されても個人の請求権がなくなるわけではない。日本は被害者の声に誠実に向き合うべきだ。 一方、日本政府の理屈は、大量破壊兵器等の拡散防止の輸出管理の一環だというものだ。国際諸協定に基づき、一定のスペックや要件を満たす物資は輸出規制の対象となる。だが主要な国際協定に参加している27カ国は「ホワイト国」として対象外となってきた。日本政府は韓国をホワイト国から外すという。しかし韓国を外すなら、他の26カ国と比べて何が問題なのかを説明すべきである。二国間の政治問題を国際協定の運用に恣意的に反映することは、国際的な不拡散体制の信頼性をも損なう。(川崎哲、ピースボート)

2019/08/21 · Leave a comment