川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2023.3] 敵基地攻撃

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 敵基地攻撃  政府は昨年末の国家安全保障戦略で「反撃能力」と称する敵基地攻撃能力の保有を決定した。そして長射程ミサイルの購入・配備計画を進めている。 政府は従来、ミサイルの脅威には迎撃網を強化するとしてきた。しかし今回「ミサイル防衛網だけで完全に対応することは難し」いとして「有効な反撃を加える能力」の保有を決めたというのである。 実際に相手からミサイル攻撃があり日本が反撃すれば、さらに相手は反撃してくるだろう。これを迎撃しきれないことは政府が認めているとおりであり、ミサイル撃ち合いの戦争になるのである。 政府は「抑止力の強化」のためだというが、実際にしていることは、抑止が破れて戦争になった場合の戦闘能力の整備だ。それをみた相手も当然、戦闘態勢を強化するだろう。 このような軍拡競争は止め、軍縮外交こそ進めるべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2023/03/19 · Leave a comment

軍拡ではなく、戦争をさせないための外交を

2月14日付の朝日新聞オピニオン面で「『力の時代』の道は」というテーマの「交論」に、私のインタビューが掲載されました。私は、敵基地攻撃能力の保有を含む安全保障3文書を批判しました。これに対して、元外務事務次官の佐々江賢一郎日本国際問題研究所理事長が、「力で平和担保」が「世界構造の底流」であるとの主張をされています。 朝日新聞 2023.2.14(交論)「力の時代」の道は 佐々江賢一郎さん、川崎哲さんhttps://digital.asahi.com/articles/DA3S15554854.html 「敵基地攻撃はミサイルの撃ち合いに」 川崎哲さんが訴える平和構想https://digital.asahi.com/articles/ASR2F4SR5R29UPQJ005.html 朝日新聞社の許可を得て、私のインタビュー記事を掲載します。承諾番号23-0493朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。

2023/02/25 · Leave a comment

[2023.2] 学者の利益相反

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 学者の利益相反  昨年末、パリの2人の研究者が「核兵器政策における調査資金と利益相反」と題する論文を発表した。外交政策シンクタンクの多くが、核兵器関連企業や核抑止戦略を掲げる政府から資金を得ており、こうした利害関係者からの資金が知的自由に影響を及ぼしているという内容だ。世界45のシンクタンクへのインタビューと調査の結果として明らかにした。 その影響とは検閲、またより多くの場合は自主規制としてみられる。とくに「議題の設定」に強い影響をもつ。ある防衛業者は、資金提供によって自社に不利となる調査結果を出さなくなることを期待していると証言した。ある政府関係者は「論争を起こしたくないなら批判者に資金提供をするのがよい方法だ」と述べた。核兵器が世界平和に必要だという学者がいたら、その人がどこからお金をもらっているのかを検証する必要があろう。(川崎哲、ピースボート)

2023/02/18 · Leave a comment

公開セミナー「戦争ではなく平和の準備を」始めました

 昨年12月、「国家安全保障戦略」など安保3文書が閣議決定されました。それは、敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増額、さらには武器輸出の全面解禁へと向かう内容を含んでおり、日本の防衛・安全保障政策を根本的に転換させるものです。日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、軍拡競争を助長し、戦争のリスクを高めるきわめて危険なものといわなければなりません。こうした決定が、十分な国会審議も経ないまま強行されてしました。政府・与党が勝手に憲法を上書きしようとしている状況を、このまま受け入れることはできません。  この閣議決定に先立ち、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らによる平和構想提言会議は「戦争ではなく平和の準備を」と題する提言を発表しました。この提言は、軍拡ではなく軍縮と平和外交こそが必要であり、それは可能であると説いています。同会議の事務局を担った平和構想研究会は、この一連の問題を扱う公開セミナーをオンラインで開催していくことにしました。  第1回は1月26日に、平和構想提言会議の共同座長をつとめた学習院大学の青井未帆教授を招いて「憲法の視点から安保3文書を読み解く」として開催しました。そのアーカイブは以下のリンクでご覧になれます。今後とも是非平和構想研究会の活動にご注目ください。  なお、平和構想提言会議および平和構想研究会の活動は、いずれも、皆さまからのご寄付に支えられています。皆さまからのご寄付をどうぞよろしくお願いします。

2023/02/05 · Leave a comment

[2023.1] 国際基金設置へ

被団協新聞の1月号(新年号)に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 国際基金設置へ  核兵器禁止条約の第2回締約国会議が今年11月に開かれる。それに向けて具体的進展が望めるのは核被害者援助の分野だ。条約第6、7条には核兵器の使用・実験の被害者に援助を提供し核実験等により汚染された環境を修復すること、そのための国際協力を行うことが定められている。昨年のウィーン行動計画には、そのための国際信託基金の設立の可能性が盛り込まれている。実現には、世界中の政府と民間からの拠出が必要になるだろう。これには人道的見地から核兵器禁止条約の未締約国であっても貢献できるはずだ。とりわけ被爆国日本は積極的に関わるべき課題だ。 ウィーン行動計画は、核被害者援助に関するあらゆる段階で核被害地域の人々との「綿密な協議と積極的関与」を定めている。日本の被爆者や被爆医療の専門家、法律家らの積極的な取り組みが求められている。(川崎哲、ピースボート)

2023/01/24 · Leave a comment

戦争ではなく平和の準備を――”抑止力”で戦争は防げない

 日本政府は、12月16日に「国家安全保障戦略」など安全保障関連の3文書改定を閣議決定しました。反撃能力という名の敵基地攻撃能力の保有、防衛費の大幅増、武器輸出の拡大といった政策が含まれています。閣議決定の前から既に、そうした政策転換を既定路線として、巡航ミサイル購入などの動きが進んできました。 これらは、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との信頼関係を悪化させ、軍拡競争を助長するきわめて危険な政策です。ウクライナにおける戦争や緊迫する東アジア情勢の中での人々の危機意識に乗じて、いたずらに軍拡に傾斜していくことは、日本とアジアの平和にとって取り返しのつかない事態をもたらす可能性があります。 さらに、これらは戦後日本の防衛・安全保障政策を根本的に大転換させるものであるにもかかわらず、国会での審議はほとんどなされないままに決定されました。一部「有識者」の報告書に基づき、民主的政治過程を経ないまま閣議決定されるという手法は、重大な問題をはらんでいます。 今本当に必要なのは、日本国憲法の平和主義の原則に基づき、軍拡ではなく軍縮を進めることであり、緊張緩和と信頼醸成のための平和外交を展開することです。そうすることで持続的で安定的な国際関係を構築しない限り、本当の平和も安全保障も実現しません。軍拡のための「戦略」ではなく、平和のための「構想」こそが求められています。 こうした中、今年10月、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らが「平和構想提言会議」を発足させました。私は、15名のメンバーによるこの会議の共同座長を、青井未帆学習院大学教授と共につとめてきました。12月15日、政府の「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」がまとまり、公開会議において発表いたしました。 平和構想提言の全文は、以下の通りです。 「戦争ではなく平和の準備を ―”抑止力”で戦争は防げない―」2022年12月15日、平和構想提言会議http://heiwakosoken.org/wp-content/uploads/2022/12/20221214_HeiwaKoso_Final.pdf 提言発表・公開会議の様子(動画)▼ 計15ページにわたる提言文書の中から、「はじめに」を以下に掲載します。 はじめにいま日本は、戦後80年近くにわたって不戦を貫いてきた平和主義の道を歩みつづけるのか、それともその道から決定的に逸脱して、アジア近隣諸国との対立と紛争への道に進むのか、その分岐点に立っている。政府・与党は、「国家安全保障戦略」など安全保障関連 3 文書の改定を強引に進め、まもなく閣議決定しようとしている。それは、日本の防衛・安全保障政策を根本的に変更し、日本の「国のかたち」そのものを転換させるものである。敵基地攻撃能力の保有をはじめとする一連の政策は、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との関係を悪化させ、軍拡競争を助長するきわめて危険なものである。そうした決定が、憲法の下での民主的過程を経ずに強行されようとしている。これは、大きな反対の声がわきあがった 2015 年の安保法制と並ぶ、あるいはそれ以上の重大な政策転換である。にもかかわらず、批判的で慎重な検証も、国民的熟議もなされていない。少なからぬメディアが「結論ありき」とばかりに政府方針を既定路線として報じる中で、憲法との関係が議論されることもほとんどなく、立憲主義のもと私たちが政府に課しているはずの平和主義と民主主義の原則が、公然と無視されている。軍事費を倍増させるような軍拡が、私たちの安全を保障するのか。むしろ軍縮こそが、それを保障するのではないか。そして、緊張緩和と信頼醸成のための平和外交の展開こそが、アジア地域の平和を実現するために求められているのではないか。軍拡のための「戦略」ではなく、平和のための「構想」こそが求められている。戦争の準備ではなく、平和の準備をしなければならない。今年10月、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者ら有志が集い、平和構想提言会議を立ち上げた。そして、政府が閣議決定しようとしている「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」について議論を重ねてきた。この提言文書は、その成果である。この文書が、いま起きている問題の理解を深め、国会議員、政党、政府関係者、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らに活用され、さらなる議論と行動につながることを期待する。 ※この提言について、新聞・テレビで多数報道されていますが、そのうちのいくつかを紹介します。 「戦争ではなく平和の準備を」安保関連3文書改定、憲法学者らが対案公表2022年12月16日、東京新聞https://www.tokyo-np.co.jp/article/220153/1 “安保3文書改定” 有識者らが提言“抑止力に頼らない政策を”2022年12月15日、NHKhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20221215/k10013924291000.html

2022/12/30 · Leave a comment

[2022.12] 米核態勢見直し(NPR)

被団協新聞の12号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 先制不使用採用せず  米バイデン政権による核態勢見直し(NPR)が公表された。争点だった核兵器の役割については「核兵器の根本的な役割は米国、同盟国、友好国への核攻撃の抑止」としている。先制不使用や、核の役割を核抑止に限定する「唯一目的」政策については「徹底した検討」の結果採用できないと結論づけた。先制不使用や唯一目的宣言をすると、競合国の核以外の軍事力による「受け入れがたいレベルのリスク」をもたらすからというのである。 報告書は、こうした非核の脅威にさらされた同盟国があるとし、これらの国々に配慮した決定であることを示唆している。日本政府は一貫して先制不使用や唯一目的に反対してきた。NPRは、先制不使用や唯一目的の目標を維持し、そのために同盟国と協力していくと述べている。日本がこれに向けてどのような行動をとるかが問われている。(川崎哲、ピースボート)  

2022/12/11 · Leave a comment

平和構想提言会議を立ち上げました

日本政府が敵基地攻撃能力保有や防衛費倍増などを含む「安保3文書」改定を図ろうとする中、平和学の研究者やNGO関係者、ジャーナリストなどが集まって、10月29日に「平和構想提言会議」を立ち上げました。政府の「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」の提言を行うことをめざしています。私は、昨秋から進めている「平和構想研究会」(前身は「集団的自衛権問題研究会」)の流れをくんで、今回の提言会議を呼びかけ、学習院大学の青井未帆教授と共に同会議の共同座長となりました。 11月21日には、日本平和学会関東地区研究会との共催で、公開会議を行いました。その様子はこちら▼でご覧になれます。 12月中旬に向けて「平和構想」提言をとりまとめていきますので、どうぞご注目ください。 趣旨等は以下の通りです。  日本政府は、年末までに「国家安全保障戦略」など安全保障関連の3文書を改定する方針です。「防衛力の抜本的強化」を掲げた「有識者会議」が作業を進めており、与党協議も行われています。そして、防衛費を「5年で対GDP比2%以上を念頭に」増額することや、反撃能力という名の敵基地攻撃能力の保有、また、武器輸出の拡大といった政策が議論されています。さらに、そうした政策転換を既定路線として、巡航ミサイル購入などの動きが進んでいます。 これらは、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との信頼関係を悪化させ、軍拡競争を助長するきわめて危険な政策です。ウクライナにおける戦争や緊迫する東アジア情勢の中での人々の危機意識に乗じて、いたずらに軍拡に傾斜していくことは、日本とアジアの平和にとって取り返しのつかない事態をもたらす可能性があります。 今本当に必要なのは、日本国憲法の平和主義の原則に基づき、軍拡ではなく軍縮を進めることであり、緊張緩和と信頼醸成のための平和外交を展開することです。そうすることで持続的で安定的な国際関係を構築しない限り、本当の平和も安全保障も実現しません。軍拡のための「戦略」ではなく、平和のための「構想」こそが求められています。 こうした中、10月29日、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らが「平和構想提言会議」を発足させました。15名のメンバーによるこの会議は、政府による「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」を文書にまとめ、12月中旬に発表する予定です。 ●平和構想提言会議 メンバー 青井未帆(学習院大学教授)※ 秋林こずえ(同志社大学大学院教授) 池尾靖志(立命館大学) 内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授) 岡田充(ジャーナリスト) 川崎哲(ピースボート共同代表)※ 君島東彦(立命館大学教授) 清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授) 佐々木寛(新潟国際情報大学教授) 申惠丰(青山学院大学教授) 杉原浩司(武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表) 谷山博史(日本国際ボランティアセンター(JVC)前代表理事) 中野晃一(上智大学教授) 畠山澄子(ピースボート) 前泊博盛(沖縄国際大学教授) (計15名、敬称略、50音順。11月21日現在) ※印の2名が共同座長。 ●発足の経緯 研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らによる有志の研究会「平和構想研究会」(2021年10月発足、代表・川崎哲ピースボート共同代表)では、今年4月「憲法の原則を逸脱し戦争への危険を高める自民党<安保提言>に抗議する」と題する緊急声明を23名の識者の連名により発表し、各界から600名以上の賛同を得た(https://www.facebook.com/heiwakosoken/posts/5759069647442239)。この取り組みを引き継ぐ形で同研究会が呼びかけて、平和構想提言会議が発足した。10月29日に第1回会議を開催。第2回会議を、11月21日に公開会議の形で行う。12月中旬に「平和構想」提言を発表する予定。 ●問い合わせ先shudantekijieiken@gmail.com (平和構想研究会)

2022/11/24 · Leave a comment

[2022.11] 核不使用の約束?

被団協新聞の11号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核不使用の約束? NPT再検討会議では核保有国も含め「核兵器は決して使われてはいけない」とくり返し確認された。だが実際の政策はどうか。先のNPT最終文書案では「先制不使用」や核の役割を抑止に限定する「唯一目的政策」が言及されていたが、後に削られた。さらに核保有国の同盟国も核の役割を減らすべきとの文言が最初あったが削られた。また非核兵器国には核を使用しないという「消極的安全保証」については、最初は無条件でとなっていたが「核保有国の声明に従って」という言葉が挿入された。これは、非核国が核保有国と同盟している場合は保証の限りではないという意味だ。このように核不使用の約束はどんどん骨抜きになっていった。そして今年の国連総会での日本決議案は、核の先制不使用にも役割低減にも言及していない。これでどうやって「核兵器を使わせない」というのか。(川崎哲、ピースボート)

2022/11/23 · Leave a comment