川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2019.3] 核軍縮はどこへ行く?

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核軍縮はどこへ行く? 米国がINF(中距離核戦力)条約離脱を宣言し、同条約は8月に失効する見通しだ。米国の動機はロシアの条約違反や中国の核戦力だと言われる。だが自ら条約を破棄したことで、もはやロシアの違反を主張できなくなった。中国を巻き込んだ新条約をとの声もあるが、中国への誘因はなく実現見通しはない。 冷戦後の米ロ核軍縮の二本柱は、戦略核を減らすSTARTと、中距離核全廃のINF条約だった。その一本が破棄された。これで21年に期限切れを迎えるSTARTが更新されなければ、冷戦後初めて、米ロが核軍縮の具体的な法的義務を負わない状態となる。 NPT第6条の核軍縮義務はどうなるのか。米国は昨年来、核軍縮の「条件創出」を提唱し始めた。いわば、安全保障面での条件が整わなければ軍縮できないという言い訳だ。核軍縮そのものが雲散霧消の勢いだ。(川崎哲、ピースボート)    

2019/03/14 · Leave a comment

米朝会談の頓挫-国際的な核軍縮枠組みを今こそ

第2回米朝首脳会談に合わせてハノイに来ています。昨年6月のシンガポールでの初会談で朝鮮半島の平和と完全な非核化という目標が合意されていたことから、今回の会談では、その実施のための具体的な行動計画が合意されることが期待されていました。しかし、ハノイでの会談は予定よりも切り詰められ、合意のないまま頓挫するという結果に終わりました。 これは大変に残念なことですが、驚きではありません。イランとの核合意やロシアとのINF条約など、米トランプ政権はこれまで、核兵器を規制する数々の国際枠組みから離脱してきました。つまるところ今回の結果は、ドナルド・トランプと金正恩という二人の不安定な指導者に核兵器交渉を任せておくことの限界を露呈したのです。今必要なのは、より普遍的な、国際社会に根ざした枠組みを再活性化することです。 核兵器禁止条約をはじめ、包括的核実験禁止条約や核不拡散条約など、国際社会には核兵器を禁止また規制する多国間の枠組みが存在します。米朝二国間交渉の頓挫を受け、改めて、これら多国間の枠組みの活性化が緊急に必要であることが浮き彫りになりました。 元来、米朝交渉は韓国の文在寅 大統領のイニシアティブで始まったものといえます。韓国や中国の役割はこれまで以上に大きくなりますし、昨年来シンガポールやベトナムが会談のホスト国となってきたことに見られるように、ASEAN諸国の働きも重要です。国連の枠組みが重要であることはいうまでもありません。日本もまた「様子見」ではなく、多国間の核軍縮枠組みを強化していくために積極的な役割を果たさなければなりません。 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、核兵器禁止条約をはじめとする多国間枠組みに基づいて朝鮮半島を非核化するロードマップを提示してきました。今こそこのようなアプローチが必要です。 会談は頓挫したとはいえ、トランプ大統領は対話を続ける姿勢を示しました。それは、せめてもの救いです。対話を継続させ、一昨年まで北東アジアを覆っていた核戦争の脅威の再来を絶対に防がなければなりません。そのためには私たち自身も市民社会として声を上げ、国際的な核軍縮交渉を前進させていかなければなりません。 朝鮮半島の完全な非核化のためには、北朝鮮と韓国の双方が核兵器禁止条約に加入するのがもっとも確実な道です。そこに日本も加わって、北東アジアを非核化すべきです。北朝鮮に対しては、完全で、期限を区切った、検証の下での不可逆的な核廃棄を妥協なく迫っていくべきです。と同時に、韓国や日本は、米国の核政策に協力することをやめ、この地域に核なき安全保障を築くために努力すべきです。ヒロシマ・ナガサキから74年。私たちが核兵器の脅威を忘れてしまったなら、同じ悲劇がまた繰り返されることになります。 ●ICANのステートメントはこちら ●Newsweekに寄稿した論説はこちら(Akira Kawasaki, “The Trump-Kim Reality TV Show Is Over—The World Needs to Get Serious About Denuclearization”, Newsweek Opinion, March 1, 2019)

2019/02/28 · 2 Comments

今年8月のピースボート地球大学「特別プログラム」、英語で学ぶ学生を募集中

ピースボートでは毎年一回、アジアを中心に世界各国の学生が集まり英語で学ぶ「地球大学・特別プログラム」を行っています。今年は8月の約3週間を使い、日本一周を中心とする東アジア・クルーズで「ともに築く平和で包摂的なアジア」をテーマに実施します。8月6日に広島、9日には長崎に寄港する航路です。私もコーディネーターの一人として乗船して核兵器問題やICANの活動についてお話しするほか、ナビゲーターとして、アレクシス・ダデンさん(歴史学者、コネチカット大学教授)、秋林こずえさん(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授)ほかの皆さんをお迎えする予定です。 詳しくはこちらをご覧下さい(日本語での案内、英語での案内)。第一次締め切りは3月31日ですので、多くのご応募をお待ちしています。

2019/02/18 · Leave a comment

[2019.2] 議会のイニシアティブ

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 議会のイニシアティブ 核兵器禁止条約をめぐり各国の議会が活発に動いている。NATO加盟国であるイタリア、ノルウェー、アイスランド、オランダでは禁止条約加入の条件や影響を議論することが議会決議で決まった。 そのうちノルウェーでは政府が条約加入に否定的な報告を出したが、NGOが反論を提示し議論は続いている。 NATOではないが近い立場のスウェーデンやスイスでも同様の動きがある。スイスでは政府が条約加入に否定的な立場をまとめたが、議会は上下院ともに条約に加入せよとの決議を上げた。 オーストラリアでは野党・労働党が政権をとったら禁止条約に加入するとの方針を決定した。ICANの働きかけの成果だ。スペインでは新政党ポデモスが禁止条約署名を含む政策合意を政府と結んだ。核の傘下の国々での動きである。比べて日本の国会のなんと静かなことか。(川崎哲、ピースボート)  

2019/02/17 · Leave a comment

核兵器を禁止する、おかげさまで2万部突破

岩波ブックレットの拙著『核兵器を禁止する』が旧版と新版を合わせて2万部を突破しました。核兵器禁止条約の背景、概要そして今後の展望などをまとめた基本書として引き続きご活用いただければ幸いです。また、もう少し入門的なやわらかいものをお求めの方は、岩波ジュニア新書『核兵器はなくせる』も合わせてどうぞ。 川崎哲『新版 核兵器を禁止する 条約が世界を変える』岩波ブックレット No.978   川崎哲『核兵器はなくせる』岩波ジュニア新書      

2019/01/25 · Leave a comment

核兵器をなくすために「今年、あなたにできること」を話しましょう~1/30東京、2/5広島、2/7長崎

2019年になりました。世界的には、核兵器禁止条約を発効させる年です。日本では、核兵器禁止条約に日本を参加させるための土台を作る年です。待っていても、分析していても、事態は動きません。一人ひとりが動く。あなたと私が動く。そうやって、日本が核兵器禁止条約に参加し、今の世界史的な潮流のなかで正しい行動をするように、私たちが押し上げていかなければなりません。 2019年、核兵器をなくすためにあなたにできること。これをテーマに、東京、広島、長崎で1月末から2月上旬にかけて会を開きます。ぜひご参加下さい。詳しくは以下の通りです。各回共に事前申込をお願いしています。 1/30(水)【東京】 核兵器はなくせる〜地球一周の航海を経て、2019年を考える〜 19:00~ ピースボートセンターとうきょう 参加費 500円 主催 ピースボート 2/5(火)【広島】 2019年、核兵器をなくすためにあなたができることーICANの川崎さんと語る 18:30~ 広島YMCA 3号館 2F多目的ホール 資料代 500円(学生無料) 主催 ピースボート  共催 公益財団法人広島YMCA  チラシはこちら 2/7(木)【長崎】 2019年、核兵器をなくすためにあなたができることーICANの川崎さんと語る 18:30~ 長崎県勤労福祉会館 3F大会議室 資料代 500円(学生無料) 主催 ピースボート

2019/01/09 · Leave a comment

[2019.1] ジェンダーと核兵器

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ジェンダーと核兵器 核兵器とジェンダー(性)というテーマへの国際的関心が高まっている。近年のNPT会議ではアイルランドが積極的に発言し文書を出している。論点は主に2つだ。 1つは核兵器が女性に偏った被害を与えること。放射線の影響は男性よりも女性とくに少女に大きく現れることが科学的に報告されている。差別やトラウマなどで女性に特有のものがあることは被爆者の経験からもいえる。こうした観点は核兵器禁止条約の前文にも記された。他の軍縮条約でも「ジェンダーに基づく暴力」に注目が集まり、昨年のノーベル平和賞は性暴力と戦う人々に授与された。 もう1つは軍縮過程への女性の参加拡大の必要性だ。軍事・安全保障の議論の場は男性支配が顕著で、なかでも日本は極端だ。政府、非政府を問わず女性の参加拡大に系統的に取り組むことが待ったなしの課題である。(川崎哲、ピースボート)

2019/01/08 · Leave a comment

りそなに続け!-核兵器製造企業への融資禁止を広げよう

明けましておめでとうございます。新年早々、重要なニュースを本日(1月6日)付けの毎日新聞が一面で報道しています。 りそなホールディングスが国内銀行として初めて、核兵器製造企業への融資を禁止する宣言をしました。核兵器製造を使途とする融資のみならず、核兵器製造に関わっている企業に融資しないという方針です。またこの記事によると、三井住友とみずほは「核兵器製造を使途とする融資は禁止している」と説明しているとのことです。これに対して三菱UFJは「個別取引ごとに慎重に判断している」として核兵器製造使途の融資を否定していません。りそなに続く銀行が出てくることを期待します。 毎日新聞(2019年1月5日ネット版、6日紙面): りそな「核製造企業への融資禁止」 国内大手銀初の宣言 https://mainichi.jp/articles/20190105/k00/00m/020/164000c 「核」への投融資に厳しい目 金融機関、世論に配慮 https://mainichi.jp/articles/20190105/k00/00m/020/166000c 核兵器製造企業への融資禁止は、核兵器を非人道兵器と定めた核兵器禁止条約成立以来の世界的な流れです。上記毎日新聞の記事では、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のなかでこの問題に主導的な役割を果たしているオランダのNGO「PAX」のスージー・スナイダーのインタビューが出ています。ICANとPAXによる「核兵器にお金を貸すな(Don’t Bank on the Bomb)」プロジェクトはこちら。日本の状況は昨年3月にピースボートのホームページで紹介しています。 この問題について昨年12月、地雷廃絶日本キャンペーンが開催した聖心女子大学でのシンポジウムで概要を報告しました。そのときのプレゼンテーションはこちら。

2019/01/06 · Leave a comment

ピースボート、100回目の出航!(12月26日横浜)

ピースボートは35周年を迎え、来る12月26日(水)にはついに「第100回ピースボート」が出航します。南回りの今回の航海では、自然エネルギーによる照明の普及プロジェクトが行われるほか、おりづるプロジェクトとしては、在ブラジルの被爆者が乗船して日本まで来られます。26日(水)午前に横浜港で出航記者会見を行います(詳しくはこちら)。 私が最初に乗ったピースボートは第24回(1998年)。スタッフとして初乗船したのは第44回(2003~2004年)の南回りでした。そのときに初めて担当した地球大学プログラムも、今日ではさまざまな形で拡大しています。こちらのFacebookページでチェックしてみてください。 何とかかんとか100回目の出航までたどり着けた(出港の様子はこちらをご覧下さい)のも、これまで参加してくださった皆さん、支えてくださった皆さんのおかげです。本当に感謝しきれません。自国中心主義と内向き志向の広がる今日、ピースボートが果たしていく役割と責任はこれまで以上に大きくなっていると思います。引き続き皆さん、参加と応援をよろしくお願いします。  

2018/12/22 · Leave a comment