被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。
核兵器は必要で正当?
核兵器禁止条約の成立とICANのノーベル平和賞受賞を受け、国会ではいつになく核軍縮の議論が続いている。気になるのは、開き直って核兵器を肯定する政府の物言いだ。
安倍首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」ためには「通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠」と述べた(1月26日参院本会議)。 河野外相は日本が核兵器禁止条約に入らない理由として同条約が「米国による抑止力の正当性を損う」ものだからとしている(17年11月21日ブログ)。たしかに核兵器禁止条約は核兵器を非正当化するものだ。だがこれに対して被爆国の政府が核兵器の「正当性」を訴えることはいかなる意味を持つか。今日日本が核抑止に依存する政策をとっているのは現実だが、その依存をどう減らしどう脱するかという意識が欠落している。(川崎哲、ピースボート)
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なぜ日本政府を批判するのですか?核兵器は必要で正当と公言する国は北朝鮮、中国等多くありますが、阿部政権は公式にそのような主張はしていません。
隣国の核保有国に対抗するには、核武装するか米国の核抑止力に頼るしかありません。日本が核兵器禁止条約に加盟すればそのような核保有国が核廃棄するとは到底思えません。貴方は日本でなく、核兵器保有国に向けて主張すべきです。
先ずは北朝鮮に核廃絶を訴えるべきと思います。
Q.なぜ日本政府を批判するのですか?
A.日本政府が、米国の核兵器に依存するという形を通じて、実質的に核兵器を容認・維持する政策をとっているからです。
Q.核兵器は必要で正当という主張を、安倍政権はしていないのではないですか。
A.しています。たとえば2018年1月30日の衆議院予算委員会の答弁で河野外相は「米国による核抑止力の正当性」を主張しています。そしてそもそも、この考え方は、2013年の国家安全保障戦略などに裏付けされています。
Q.隣国の核保有国に対抗するなら、核武装するか米国の核抑止力に頼るしかないのではないですか。
A.日本がそのように主張すれば、隣国たる北朝鮮も、隣国からの核の脅威がある以上核は捨てられないと主張するでしょう。よって両者核を譲らずということになりますね。
Q.日本が核兵器禁止条約に入っても、核保有国が核を廃棄しないのではないですか。
A.核兵器禁止条約に入る国が増えれば増えるほど、核兵器が悪であるという国際規範は強まります。核保有国は条約に入らなければその条約に法的に拘束はされませんが、国際規範が強まることによって、政治的、経済的、社会的に核兵器に対する強い圧力を受けるようになります。このことが、核軍縮を促進し、核不拡散を強化します。逆に日本が核兵器禁止条約への加入を拒否し続ければ「核兵器の直接の被害国である日本ですら核兵器を容認しているのだから、核兵器はべつに悪いものではないのだろう」という誤ったメッセージを国際社会に発信することになります。
Q.あなたは日本ではなく核保有国に向けて核兵器の廃絶を訴えるべきではないですか。
A.日本だけではなく核保有国にも核兵器の廃絶を強く訴えています。私はICANのベアトリス・フィン事務局長とともに6月12日にシンガポールに行き、核兵器禁止条約を活用した朝鮮半島の完全な非核化についてのICANとしての提言を、米朝両政府ならびに地域の関係諸政府にむけて提出し発表しました。このような形で核保有国に対する直接の働きかけをした政府、政府機関、民間団体はそう多くはなかったと思います。私たちICANは引き続きこうした提言を続け、関係国との協議を申し入れていきます。
Q.日本よりもまずは北朝鮮に核廃絶を訴えるべきではないですか。
A.北朝鮮と日本の双方に核廃絶を訴えるべきだと思いますし、そうしています。まず北朝鮮が廃棄すべきでそれが達成したら日本も応じる、という論理でいけば、それは北朝鮮側でも鏡写しになって、まず米日が核の脅威を取り除くべきでそれが達成したら北朝鮮も応じる、という話になるでしょう。これでは核はなくならないどころか、逆に核の拡散にもつながります。
一方が先んじて行動する、あるいは、それが難しければ両者が同時に行動するまたは地域諸国が同時に行動するという枠組みが必要です。「北東アジア非核兵器地帯」というのが、そのような構想です。あるいは、北朝鮮、韓国、日本の3カ国が核兵器禁止条約に同時に加入することもできるでしょう。