[2025.7] イラン核施設への攻撃
被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 イラン核施設への攻撃 6月、イランの核施設に対してイスラエルが攻撃を行い、両国は武力紛争状態に陥った。その後米国がイスラエルを支援し3カ所の核施設を攻撃した。イランに核兵器開発疑惑があるからだという。しかし疑惑があるから武力攻撃が許されるというなら世界は完全な無秩序に陥る。国連憲章は紛争の平和的解決を定めており、各国が武力の行使を許されるのは自衛権行使のときにのみ限定的にだけだ。 軍事施設だけを狙っても、市民が犠牲になることはある。核施設を攻撃すれば、放射能被害が出る危険がある。 疑惑があるなら国際原子力機関による査察に基づき、NPTのもと外交交渉で解決すべきだ。米国のイラン攻撃は、NPT体制そのものに大きな打撃を与えた。条約からの脱退を考える国も出てくるだろう。日本政府は、イスラエルと米国の攻撃の違法性を指摘し、外交解決を主導すべきである。(川崎哲、ピースボート)
[2025.6] 危機意識の欠如
被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 危機意識の欠如 5月、NPT準備委員会は、来年の再検討会議への勧告を採択することなく閉幕した。議長による勧告案は文書として残った。しかし議論の中心は、情報公開・説明責任や、再検討会議プロセスの効率化といった手続き論だった。終末時計の針が89秒前をさし、核兵器使用の可能性がかつてなく高まっているということに対する危機意識は感じられない。 主たる責任は核兵器国および他国の核兵器に依存している国々にある。その一つの日本は、核依存国も自国の政策に関する定期報告をすべきだという声を拒絶した。核兵器国はブロックに分かれ互いを非難し合っている。 核が使われた場合の壊滅的な影響に対する認識を持てば、このような悠長な議論はできなくなるはずだ。来年の再検討会議では、核がもたらす人道・環境への影響に関する特別セッションを設けて、そこから議論を始めるべきではないか。(川崎哲、ピースボート)
[2025.5] 国際賢人会議の提言
被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 国際賢人会議の提言 3月、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議の最終会合が開かれ、提言が発表された。2022年に当時の岸田首相が立ち上げた専門家会議である。 提言が掲げた「中核的な原則」には、国際法の遵守といった基本原則と並んで「全ての国は、核兵器への依存から脱却するために努力し続けなければならない」と明記された。「核抑止が安全保障の最終的な形態であるとこれまで示されたことはなく、またこれからもそうあってはならない」とも述べている。政府主催の会議が、核抑止からの脱却を明確に掲げたことは重要だ。 ただし具体的な提言は、核兵器を使わせない、あるいは増やさないといった事項に偏っており、軍縮への切り込みは甘い。 外務省は、核抑止からの脱却はあくまで「最終形態」だと説明している。今からどんな行動を起こせるか、国会において真摯に議論すべきだ。(川崎哲、ピースボート)
広島-ICANアカデミー2025、受講生募集中です
広島県とICANが協力して2019年から行っている「核兵器と安全保障を考える広島-ICANアカデミー」、今年度の募集が始まっています。応募締切は6月1日(日)。世界の若者たちと共に英語で学ぶプログラムです。ウェビナーセッション(7~8月)と広島現地セッション(10月)の2部構成からなっています。軍縮・平和・安全保障について、人道の視点と国際的視野をもって学び活躍したい皆さんにお勧めです。詳しくはこちらのリンクから。
ピースボート Voyage120 戦後80年特別プロジェクト「TIME FOR PEACE」を行っています
4月23日に横浜を出航したピースボート地球一周の船旅 Voyage120では、戦後80年特別プロジェクト「TIME FOR PEACE」を行っています。私は船に長期間乗るのは本当に久しぶりなのですが、横浜からニューヨークまで乗船予定で、多くのスタッフと一緒にこのプロジェクトを進めています。プロジェクトの様子は、ピースボートのFacebookページで紹介されているほか、私のSNSアカウントでも随時報告しています。どうぞご覧ください。TIME FOR PEACE(今こそ平和を)!
核兵器をなっくすラジオ
核兵器をなくす日本キャンペーンでは、「核兵器をなっくすラジオ」を始めました。 「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く」核兵器廃絶のあれこれを語り、盛り上げていこうという番組です。 Podcasts, Amazon Music, YouTube, Spotifyの各媒体で聴くことができます▼ ご感想等は核兵器をなくす日本キャンペーン事務局までお寄せください。 info@nuclearabolitionjpn.com
[2025.4] 核抑止を批判する
被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核抑止を批判する 核兵器禁止条約第3回締約国会議では「核抑止」を厳しく批判する宣言が採択された。宣言は「核抑止とは核リスクを前提としたものであり、すべての者の生存を脅かしている」と指摘し、「核兵器を持っているかどうか、核抑止政策に与しているか反対しているかにかかわらず、すべての国の安全を脅かしている」と強調している。 日本を含め、この条約に不参加の国々は核抑止が安全保障に不可欠だという。欧州では、米新政権が信用できないから代わりに仏英が「拡大核抑止」を提供するという議論まで出ている。核抑止の評価をめぐる対立点が鮮明になってきた。 オーストリアは核兵器がもたらす「安全保障上の懸念」に関する数十頁の報告書を出して、核抑止のリスクを丁寧に論じた。これをもって核に依存する国々とも議論をしていきたいとしている。日本でも正面から核抑止を議論すべき時だ。(川崎哲、ピースボート)
[2025.3] 岸田前首相の反対
被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 岸田前首相の反対 核兵器禁止条約第3回締約国会議について首相が「不参加の意向」と最初に報じたのは1月25日の読売で、その夜NHKが「代わりに与党議員を派遣する方向」と報じた。この時点で自民党内では議員を派遣する案が実際に検討されていた。2月4日の会見で自民党の森山幹事長は党の議員を派遣しないと明言した。この背景について共同通信や中国新聞は、首相からの検討指示を受け森山幹事長が岸田前首相と麻生元首相に意向を確認したところ、両氏とも反対だったので派遣しないとの結論に至ったという。核軍縮がライフワークと言っていた岸田前首相が党議員の派遣にも反対したとすれば重大な問題であって、本来メディアは岸田氏に公開取材を申し込むべきところだ。現首相が一歩踏み出すのを前首相が止めたという構図も醜悪であり、自民党による政策決定のあり方そのものを問わねばならない。(川崎哲、ピースボート)
[2025.2] 第2次トランプ政権
被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 第2次トランプ政権 第2次トランプ政権は核軍縮や平和にどんな影響を与えるか。軍事政策上の核兵器の役割は、拡大に向かうだろう。民主党政権では縮小、共和党では拡大という振り子である。 一方でかつて初の米朝首脳会談を行ったように大胆な軍縮交渉に出る可能性もある。中ロとの間においてもだ。 「ウクライナ戦争を終わらせてくれるのでは」という漠然とした期待が持たれているのも、彼の強力な交渉力ゆえだろう。これらのいくつかは実現するかもしれない。 私が危惧するのは、あからさまな国際ルール無視の姿勢がもたらす悪影響だ。各国が自国の利益を優先するのは当然だが、それは経済であれ軍事であれ、一定のルールの上でのはずである。ルールなど邪魔で無用だという外交が続けば、世界的ダメージは大きい。 日本は「交渉に負けない」ということもあるが、より重要なのは「国際ルールを壊させない」ことだ。国際法に従う核軍縮も、その一つである。(川崎哲、ピースボート)
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