ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続くなか、プーチン大統領は、核兵器部隊を戦闘態勢に入れました。邪魔をする国には核兵器を使うぞと、世界中を脅しているのです。こんなことを許してはなりません。核兵器による威嚇は、国際人道法違反です。ロシア自身が今年1月の核保有5カ国の声明で「核戦争をしてはならない」と宣言していたことにも反します。
こうしたなか日本で、ウクライナのようにならないためには日本も核武装したり、米国の核兵器を持ち込んで配備したりする必要があるといい出している人がいます。たいへん危険な主張です。
まず「ウクライナはかつて核を保有していたが、それを手放したので攻め込まれた」という主張がありますが、これは全くの誤りです。ウクライナには、旧ソ連すなわちロシアの核兵器が置かれていましたが、1990年代半ばにロシアに返還しました。そのことが理由で今日攻め込まれたといえる根拠は、何もありません。
また、今回侵攻したロシアは、西側の核軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)と長らく対峙してきましたが、ウクライナに攻め入ればNATOと対決する形になることは分かっていました。それでもロシアは、無謀にも軍事侵攻を始めたのです。核兵器は、この侵攻を抑止しませんでした。
さらにこのたび、ウクライナに隣接するロシアの同盟国ベラルーシでは、独裁者ルカシェンコ大統領が、ロシアの核兵器を国内に配備できるように、憲法を変えてしまいました。このことで現在の紛争において核のリスクが一段と高まったことはいうまでもありません。
これらのいずれをとっても、核兵器は紛争をエスカレートさせることはあっても、安定させたり収束させたりしていないのです。
国際ルールを破って戦争を始め、核の脅しをしているのはロシアです。私たちはこの行為を批判し、国際ルールを立て直す努力をしなければいけないのであって、自分たちも核の脅しに加わろうというのでは、世界はますます危険になるだけです。核戦争を防ぐ唯一の道は、核兵器の全面的な禁止と廃絶です。
2022年3月1日
川崎哲
今、最も必要とされている視点だと考えます。メディアなどでは、ブダペスト覚書のことが議論の的になってきていますが、この覚書の経緯について、よく理解しないまま議論する方が多いようにも思われます。これについても、もし可能でしたら、もう少し補足いただければと希望しております。