川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

国防総省や軍事企業からお金をもらって「安全保障政策」を提言?――米シンクタンクの実態に迫る報告書

米国の政策に大きな影響を及ぼしているシンクタンクの多くが、米国政府と軍事企業から多額の資金援助を受けて活動している。米国の上位50のシンクタンクに対して、10億ドル以上もの資金が米国政府や軍事企業から提供されている。――このことを明らかにした国際政策センター(Center for International Policy)の報告書(2020年10月)の要旨を、このたびピースボートが日本語に訳しました。 この報告書によれば、米国政府で最大の資金援助を行っているのは、国防長官府、空軍、陸軍、国土安全保障省、国務省であり、軍事企業で最大の資金援助を行っているのは、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ボーイング、ロッキード・マーティン、エアバスの各社です。資金の受領額が多いのは、ランド研究所、新アメリカ安全保障センター、新米国研究機構の3組織です。 シンクタンクの多くはこうした資金受領について情報公開しておらず、「利益相反」が隠されている可能性があると、報告書を執筆したベン・フリーマン氏は指摘しています。米国防総省や軍事企業から出資を受けたシンクタンク所属の専門家が、議会証言や調査研究で、防衛費の増額や武器売却の必要性を宣伝する可能性があるからです。この報告書は、結論として、シンクタンクが資金援助元に関する情報を公開することを法的に義務づけるべきだと勧告しています。 要旨の日本語訳はこちらのリンクからよむことができます。 シンクタンクと軍事企業のつながりについては、ICANが、核兵器製造企業からシンクタンクへのお金の流れを明らかにしています(こちらをご参照ください)。 日本においても、武器の購入や兵器の研究開発の必要性を訴える”専門家”や彼らが所属している組織が、どういうところからお金をもらっているのか、注目していく必要があるでしょう。

2021/09/11 · Leave a comment

新刊です!『絵で見てわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?』(8/29出版記念イベント)

このたび、私が監修した新刊『絵で見てわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?』が、旬報社から出版されました。核兵器の問題を小学生から大人まで理解できるように、絵や図で分かりやすく解説した本です。 『絵で見てわかる 核兵器禁止条約ってなんだろう?』 川崎哲監修 旬報社 B5・112ページ定価 4,180円(税込) 目次第1章 核兵器はやっぱりおそろしい第2章 増え続けて行った核兵器第3章 核兵器をなくすために、これまで世界が取り組んできたこと第4章 そして核兵器禁止条約が作られた核兵器禁止条約全文※被爆者の服部道子さん、三宅信雄さんの証言も掲載されています。 詳細> https://www.junposha.com/book/b589081.html 内容には自信がありますが、残念ながら少々高いものです。個人で購入するのは大変かもしれません。その場合に、ご近所の図書館や学校で備えつけるようにリクエストをしてもらえればと思います。また、お子さんやお孫さんへのプレゼントにもどうぞ!調べ学習の教材にも適しています。 ***** ピースボートでは、この出版記念として、下記イベントを行います。 8/29 子どもも大人もよく分かるー核兵器禁止条約ってなんだろう? 核兵器が存在するこの世界に生まれた子どもたちは、「核兵器のない世界」をどうすれば想像できるでしょうか。今回は、子育て真っ最中のおとなたちが、子どもたちの「?」に向き合いながら、疑問や質問をぶつけます。ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の国際運営委員をつとめるピースボートの川崎哲が、それらに答えながら、子どもとおとなが一緒に考えていく方法を探っていきます。 【日時】8月29日(日)15時~16時15分【配信】Youtube にて配信いたします。リンクはこちら【講師】川崎哲(ピースボート、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員)【参加費】無料(申込不要)【問い合わせ】ピースボート(担当:松村)pbglobal (a) peaceboat.gr.jp https://peaceboat.org/38538.html ★この新刊は、ピースボートが行っているクラウドファンディング「被爆を生き抜いた『明子さんのピアノ』を次世代に響かせたい!」のリターンとなっています。8月末日まで継続していますので、こちらにもどうぞご協力をお願いします。https://camp-fire.jp/projects/view/142370

2021/08/23 · Leave a comment

[2021.8] コロナ禍でも年8兆円

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 コロナ禍でも年8兆円  昨年、世界の核保有国による核兵器への支出総額は726億ドル(約8兆円)だった。ICANの報告書によるものだ。米国374億ドル、中国101億ドル、ロシア80億ドルと続く。世界の総額は前年より14億ドル増え、1分あたり1500万円の計算だ。新型コロナが拡大しても、安全保障の支出見直しは起きていない。昨年の世界の軍事費総額も前年比2.6%増の2兆ドル(214兆円)で過去最大を記録した。 ICANの報告書はまた、昨年11の企業が核兵器に関わる契約を行い277億ドルの利益を上げたこと、そしてこれらの企業が1億ドル以上でロビイストを雇い、安全保障系のシンクタンクに1000万ドルもの資金提供をしていることを明らかにした。核兵器を製造している企業が「核兵器が必要だ」とする政策の決定にお金をかけて働きかけをしているのである。(川崎哲、ピースボート)  

2021/08/19 · Leave a comment

閣僚らの靖国神社参拝に抗議します。改めてその理由を述べます

日本の敗戦から76年を迎える今日8月15日にあわせて、現役の閣僚や閣僚経験者らが相次いで靖国神社を参拝しています。私は、日本の国政に責任のある人たちが、このように、かつての日本による侵略戦争を賛美する神社を訪問することは許されないと考え、これに抗議します。私がそのように考える理由については、かつて2013年末に安倍首相が靖国神社を参拝して国際的に強く非難されたとき、ブログに記しました。その文章をそのまま以下に再掲します。もう7年半前の文章ですが、今でも、ここに書いていある通りに考えています。(当時のブログ記事へのリンクはこちら) 首相の靖国神社参拝がなぜそんなに問題なのか?と疑問に思っている方へ -戦争の「責任」を考えよう (2013.12.28) 安倍首相の靖国参拝に世界中から批判の声が上がっています。私自身も、靖国参拝にはキッパリと反対です。ツイッターに以下のような文章を投稿しました。ご意見、ご感想があればお願いします。なおピースボートは、多くの市民団体と共に、安倍首相の靖国神社参拝に抗議する共同声明を出してます。 — 安倍首相の靖国参拝は、中韓はもとより、米、EUそして露からも批判を浴びている。国際的には、安倍首相のこの行動を支持する声は一つもない。日本は完全に孤立している。だが悩ましいのは、日本国内には「何となく支持」という声が少なくないであろうことだ。 一部のゴリゴリの右翼「愛国」派はさておき、「国のために命を落とした人たちを追悼すること自体は悪いことではないのではないか」という感覚を持つ人は少なくないと思われる。とくに若い層にその傾向はある。近現代史の教育が圧倒的に不足しているからと言えるだろう。 近現代史の教育を受けていない若者からすると「戦争で犠牲になった人を追悼するのに、なぜそんなに外国から批判されなければいけないのか」という疑問や反発もありえよう。そこで「若い者はなっちょらん」などと言っても通じないので、私なりに、靖国参拝がなぜダメかを分かりやすく書いてみたい。  まず、日本はかつて、朝鮮半島や台湾を植民地支配し、そして中国や東南アジアに侵略戦争を行った。それによって2000万人もの命が奪われた。日本でも300万人もの人たちが亡くなった(東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下など)。 戦争には責任者と被害者がいる。日本の侵略戦争を立案、指揮、 遂行していた責任者が「A級戦犯」と言われる人たちだ。靖国神社は、これら侵略戦争の責任者たちを祀っている。そして神社自体が、侵略戦争が正しかったとの歴史観に基づいて運営されている(侵略戦争を賛美する博物館が神社内にある)。 戦前・戦中の日本は、軍国主義の発展が、国家神道という「国営の宗教」に支えられてきた。政治が宗教を後押しし、その宗教をたたき込まれた人々が戦争を支持するようになっていった。現代世界では「イスラム原理主義武装勢力」があるが、宗教が政治と結びつき暴力を支えるという意味では、似ている。 靖国神社は国家機関でも何でもない、一宗教法人である。そこに首相や閣僚が公金を使って参拝するのは「政教分離の原則」に反する。これがなぜ問題かというと、かつて戦争を賛美する宗教を政治が後押ししてきた歴史があったからだ。靖国神社は、今でもかつての侵略戦争を賛美する考え方を持っている。  「戦争で命を落とした人たちにお参りするのは当然のこと」という意見について。「A級戦犯は問題だけれども、戦没者追悼は当然だ」という気持ちを持つ人は多いだろう。ここではっきりとさせておきたいが、靖国神社は戦没者追悼の施設ではない。 戦争では日本でも多くの人たちが犠牲になったが、靖国神社は 「国のために戦って命を落とした人たち」とそれ以外の人たちを分け、前者を祀っている。政治指導部の命令にしたがい、戦争にかり出された人たちだ。彼らは責任者の過ちによる被害者なのだが、責任者と一緒に「英雄」として祀られている。 戦争には責任者と被害者がいる。多くの日本兵は被害者だった。(もちろん戦場では侵略者、加害者だったのだが、日本の政治指導部との関係では被害者だ。)本来被害者は、責任者に対し謝罪や補償を求める立場にある。だ が靖国神社は彼らを「英雄」として持ち上げ、責任者の責任をうやむやにしている。 東南アジアの戦場に送り込まれた日本兵の多くは、補給を断たれ飢えで死んでいる。指導部の無責任な指揮・作戦の結果、棄てられたのだ。「国のために戦った」なんていう”美談”では済まされない。 最近テレビや映画で、特攻隊やらかつての日本兵を 「国のために戦った若者たち」として美化するような物語が流行っているようだが、私には気持ち悪くてしょうがない。戦争は美しいどころが、むごたらしく凄惨なものなのに。そんな物語をもてはやしてきたマスコミにも責任の一端がある。 自分探しの若者たちが、いくら探しても見つからな いので、かつて軍国主義の国営宗教にやられて戦争に突っ込んでいった若者に共感し始めているのかもしれない。それだったら早く目を覚ましてほしいものだ。 安倍首相の靖国参拝で世界中から非難囂々の今の状況が、よい冷や水になるとよいが。  戦争の責任者の責任をうやむやにし、被害者と責任者をまぜこぜにし、被害者を「英雄」にまつりあげる。過去の戦争を肯定したい人たちや、これから戦争したいと考えている人にとっては都合がいい。戦争がも たらす犠牲を神格化する儀式だ。靖国参拝が「戦争への道」「軍国主義」と批判されるゆえんだ。 戦争の被害者や犠牲者を追悼し、その体験を語り継ぐ取り組みは、戦争を遂行した側の論理に沿ってではなく、被害者たちの人間としての体験に即して営まれていかなければならない。そして、惨劇を生み出した責任と構造を暴き、批判し、二度とくり返さないための教訓と行動を引き出すものであるべきだ。  以上、靖国参拝は「戦争で命を落とした人にお参りし、平和を祈る当然の行為」だと考えているかもしれない人向けに書きました。その気持ちは大切だと思いますが、靖国神社やそこにお参りする政治家たちは、その貴方の気持ちとは全く反対の方向を向いているものですよ、ということが言いたかったです。 2013.12.28 川崎哲

2021/08/15 · Leave a comment

[2021.7] 濃縮と再処理

被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 濃縮と再処理  ウランの濃縮と使用済み核燃料の再処理は、核兵器開発に直結しうる「機微」な技術と呼ばれる。原発の燃料は低濃縮ウランだが、高濃縮ウランは核兵器の材料となりうる。また使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムは、やはり核兵器の材料になりうる。 1992年に韓国と北朝鮮が出した非核化共同宣言は、両国が「濃縮も再処理もしない」と約束していた。 一方、日本は濃縮も再処理も行っている。とくに使用済み燃料を全量再処理するとの政策で、現在45トンものプルトニウムを有している。核兵器約8000発に相当する量だ。そんな日本を見て、韓国では自分たちも同様の権利を持ちたいとの声が上がっている。これは朝鮮半島非核化への妨げとなる。まずは日本が率先して核兵器の材料となりうる物質を作るのを止め、さらにそれを地域全体の合意にしていくべきだ。(川崎哲、ピースボート)  

2021/07/19 · Leave a comment

[2021.6] ああ言えばこう言う

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ああ言えばこう言う  この間、ペリー元国防長官やカントリーマン元国務次官補が、米国が核兵器の先制不使用政策をとろうとしたが日本の反対で実現しなかったと証言した。4月、この問題を国会で問われた茂木外相は、先制不使用は「すべての核兵器国が検証可能な形で同時に」行わなければ機能せず、検証もできない宣言で「わが国の安全保障に万全を期すことは困難」と述べた。こちらから核を先制使用するのはやめようという提案に対して、相手が先制不使用を宣言しても信用できませんと返している。話のすり替えだ。 核兵器禁止条約に対して政府は「そのような包括的な合意は時期尚早だ。一歩一歩進むべきだ」と言ってきた。では先制不使用という一歩を踏み出してはどうかと言われると「包括的な合意がないから無理だ」という。ああ言えばこう言う。そもそも核兵器をなくす気があるのか。(川崎哲、ピースボート)  

2021/06/14 · Leave a comment

[2021.5] 日米共同声明

被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 日米共同声明  4月、菅・バイデン両首脳の初の共同声明では、米国による「核を含むあらゆる種類の米国の能力」を用いた日本防衛への「揺るぎない支持」が表明された。2017年の安倍・トランプ両首脳の初声明も「核」を明示していたが、それが再確認された形だ。3月の日米安保協議委員会(2+2)で合意された「拡大抑止の強化」が踏襲されている。 今回の共同声明は「台湾海峡」に言及するなど、中国と対峙する姿勢を鮮明に打ち出した。報道は米中新冷戦だとばかりの過熱ぶりだ。人権、民主主義、法の支配などの価値の共有が叫ばれているが、「平和」もまた基本的価値であるのを忘れてはならない。国連憲章の紛争の平和的解決の原則、日本国憲法の平和主義。核兵器についてはNPT第6条の下で米中共に核軍縮義務を負っている。まちがっても軍備競争に陥ってはならない。(川崎哲、ピースボート)  

2021/05/15 · Leave a comment

衆院選の候補者に「核兵器禁止条約 Yes or No!?」を聞いていきましょう

今年の秋までに衆議院議員選挙が行われます。選挙ではいろいろなことが争点になりますし、政治家たちに問わなければいけないことはたくさんあります。しかしその中でも、私は、核兵器禁止条約の問題が、もっとも重要な争点の一つとして議論されなければならないと思います。今年1月22日に発効した核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、来年1月に開催される予定です。被爆国日本は、核兵器禁止条約に署名・批准すべきであり、それに向けてまずは第1回締約国会議に、最低限オブザーバーの形で参加すべきです。そのことについて、次の総選挙に立候補を予定している人たちがどう考えているのか一人ひとり尋ね、立場表明を促していきましょう。 そのために、議員ウォッチをどうぞご活用ください。 ●現職以外の候補予定者の方は、議員ウォッチの候補予定者フォームから、ご自身の立場を入力することができます。(こちらから) ●現職の衆議院議員には議員ウォッチのサイトに一人ずつのページがあり、そこからご自身の立場についての情報を送ることができます。 皆さん、是非ご自身の地元の候補予定者や現職議員に声をかけて、核兵器禁止条約への立場について議員ウォッチに回答を寄せるよう、促してください。すべての議員の電話、ファックス、SNSなどの連絡先が、議員ウォッチに出ています。また、候補予定者や現職議員のこの問題への態度について情報をお持ちの方は、是非議員ウォッチまでお知らせください。お待ちしております。 ※議員ウォッチの活動へのご支援をお願いしています。マンスリー・サポーターを広く募っています。詳しくはこちらから↓ どうぞよろしくお願いします。

2021/05/08 · Leave a comment

[2021.4] イギリスの危険な決定

被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 イギリスの危険な決定  英ジョンソン政権は3月、新しい外交安保政策で、保有核弾頭数の上限引き上げを発表した。同国は昨年6月現在195発の核弾頭を持っている。これを20年代半ばまでに180発以下にすると公約してきたが、今回これを撤回し、保有上限を260発にするというのだ。4割以上の引き上げである。イギリスはこれまで5核兵器国の中ではもっとも誠実に核軍縮に取り組んできただけに、驚くべき方針転換である。 脅威として名指しされたロシアや中国が反発して同様の行動を取れば、世界規模で核軍拡競争を助長しかねない。グテーレス国連事務総長も憂慮を表明している。NPT第6条の核軍縮義務や過去の再検討会議合意に違反していることは明らかであり、8月のNPT再検討会議でどう説明するのかが注目される。日本政府はきちんと憂慮を伝達し説明を求めるべきだ。(川崎哲、ピースボート)  

2021/04/18 · Leave a comment