川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2025.1] カナダ議会の決議

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 カナダ議会の決議  日本被団協へのノーベル平和賞授賞式があった12月10日、カナダ議会では一本の動議が全会一致で可決された。被団協の平和賞受賞を祝福しカナダ政府に核兵器禁止条約への「関与」を求めるものだ。 その内容はこうだ。①日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことを評価する。②被爆者が長年たゆまず、核兵器使用がもたらす壊滅的な人道上の結果についての世論喚起をしてきたことに感謝する。③彼らのメッセージは、核の脅威が差し迫った今日において重要な意味をもつ。④核軍縮は世界の平和と安全に向けて重要な措置であることを確認する。⑤政府に対し、核兵器禁止条約へのさらなる関与を含む、具体的な措置をとることを奨励する。 核兵器禁止条約への「関与」とは、オブザーバー参加を求める趣旨と解することができる。日本の国会においても、同様の国会決議を与野党で上げるべきではないか。(川崎哲、ピースボート)

2025/01/24 · Leave a comment

[2024.12] 「核戦争」科学パネル

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 「核戦争」科学パネル  国連総会で「核戦争の影響と科学的調査」と題する決議が採択された。核戦争の影響を研究する科学パネルを設置するという内容で、21名の委員を国連事務総長が任命する。核戦争が地域や地球にもたらす物理的・社会的影響、つまり「気候や環境への影響、放射線による影響、公衆保健、世界的社会経済システム、農業や生態系への影響」を2025年から2年間研究し、包括的な報告書を出す。 アイルランドとニュージーランドが主導したこの決議案に第一委員会では、日本を含む144カ国が賛成した。核保有国は中国が賛成、英、仏、ロは反対、米国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮は棄権した。NATO諸国は賛成(ノルウェーなど)と棄権(スペインなど)に割れた。 核戦争の破滅的な影響を明らかにすることは、核兵器廃絶への推進力となる。被爆国日本は委員を出して貢献すべきである。(川崎哲、ピースボート)

2024/12/19 · Leave a comment

[2024.11] ノーベル平和賞

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ノーベル平和賞  日本被団協がノーベル平和賞を受賞したという報を受け、驚きと感慨を覚えながら7年前にICANが受賞したときのことを思い出した。当時とくに印象に残ったことの一つは、式典で読み上げられたノーベル委員会による授賞理由演説の質の高さである。核兵器禁止条約の意義を雄弁に語り、それに取り組む「全ての個人と団体を賞賛」した。今年の被団協への授賞理由演説が楽しみだ。 ノーベル平和賞は当時、核兵器禁止条約やICANの存在についての認知を一気に世界に広げてくれた。今年の被団協の受賞によって、ヒバクシャの存在はこれまでよりも格段に世界に知れ渡ることになる。そのお話を聞き核兵器をなくすために行動しようという人の輪は必ず大きくなる。その運動の推進は、しかし、被爆者に続く世代に課せられた課題である。お祝いに終わらせることなく、次の運動を準備したい。(川崎哲、ピースボート)

2024/11/20 · Leave a comment

[2024.10] カザフのNGO

被団協新聞の10月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 カザフのNGO  ICANは8月にカザフスタンで核被害者フォーラムを開催するにあたり地元の2NGOの協力を得た。1つは国際安全保障政策センター。代表者アクメトフさんは元外交官だが「政府ではできないことをやりたい」とNGOを立ち上げた。核実験被害者を国際会議に連れてきて実情を訴えるといった活動に長年取り組んでいる。 もう1つは、昨年発足した若者団体STOP。STは草原(ステップ)を指す。20代の彼らが会議を見事に取り仕切ってくれた。最終文書をカザフスタン政府代表に手渡す際、1人が「一言申し上げたい」とマイクをとった。そして、政府が核廃絶を国際社会に訴えているのはよいが、国内の核被害者は未だに十分な援護を受けられていない。政府はもっと被害者に寄り添うべきだと発言。これには大使もたじたじとなっていた。日本とはひと味違う民主主義の力を垣間みた。(川崎哲、ピースボート)

2024/10/23 · Leave a comment

日本被団協のノーベル平和賞受賞にあたって

日本被団協のノーベル平和賞受賞の報を聞き、心から喜んでいます。本当に嬉しいです。これまで、つらい記憶を思い出しながら、きつい体に鞭打ちながら、被爆の実相を語ってきてくださった一人一人のお顔が思い浮かびます。すでに亡くなられた方も数多くいます。そうしたお一人お一人のことを今、考えています。 今こそ世界は、被爆者の声に耳を傾けなければなりません。 ノルウェーノーベル委員会は、世界でまた核兵器が使われるかもしれないという危機的状況である今だからこそ、日本被団協に平和賞を授賞してくださったのだと思います。ヒロシマ・ナガサキを、世界のどこにおいても、決して繰り返してはなりません。 そしてまた、日本においても、戦争体験や被爆体験が風化している現実があります。政治家たちが、核抑止力の強化や、核共有までも口にしている状況です。日本被団協の平和賞受賞は、私たちが改めて、日本が唯一の戦争被爆国であリ、核兵器廃絶に向けて世界を主導する役割を担わなければならないということを思い起こす好機です。 日本は、核兵器禁止条約に署名・批准すべきです。日本政府は、日本被団協に祝辞を贈るのであれば、その中で、日本が核兵器条約への署名・批准を目指すことを明言すべきです。 私は、日本被団協の多くの被爆者の方々から、日本が手にした平和憲法、特に憲法9条がいかに大切であるかを教わってきました。私たちは今こそ、日本の戦後平和主義の原点に立ち返り、武力によらずに諸国民の信頼と国際協調によって平和を作るという原則を高く掲げるべきだと思います。 2024年10月11日 川崎哲 ピースボート共同代表核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員核兵器をなくす日本キャンペーン専務理事

2024/10/11 · 2 Comments

自民党総裁選と核兵器――解説始めました

9月27日に投開票が行われる自民党総裁選挙に、9人が立候補しています。議員ウォッチプロジェクトでは、核兵器をなくす日本キャンペーンのボランティアの皆さんの協力をえて、候補者たちに核兵器に関する政策についてのアンケート調査をしています。しかしいずれの候補者も反応が悪く、回答集めには苦戦しています。とはいえ、調査はめげずに継続していきます。そしてそれと並行して、各候補が核兵器に関わる外交・安保政策について発言している内容を取りあげ、解説をしていくことにしました。この解説が、議論のきっかけになればと思います。解説・川崎哲の「自民党総裁選挙と核兵器」2024は、こちらからご覧になれます。

2024/09/20 · Leave a comment

[2024.9] 核兵器に14兆円

被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核兵器に14兆円  ICANの調べでは昨年一年間の核保有9カ国による核兵器への支出総額は914億ドル(約14兆円)。前年比で13%増加した。 うち米国は515億ドル(7.7兆円)を支出しており、他の全ての核保有国の支出総額を超えている。第二位は中国で119億ドル第三位はロシアで83億ドルと続く。ICANがこの調査を始めた5年前に比べ、世界の核兵器支出総額は34%増えた。 一方で世界20社の企業が核兵器の開発や維持で昨年少なくとも310億ドル(4.7兆円)を稼いだ。継続中の契約は3350億ドル(50兆円)以上あり、昨年は新規契約が79億ドル以上あった。これらの企業は政府やシンクタンクに影響力を行使している。米仏政府へのロビー活動に1.2億ドルを費やし、主要シンクタンクに6百万ドルを寄付している。核兵器ビジネスは、このように回っているのだ。(川崎哲、ピースボート)

2024/09/16 · Leave a comment

[2024.8] AUKUS

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 AUKUS  2021年に発足した米国、イギリス、オーストラリア(豪州)3カ国の軍事同盟「AUKUS」が、世界に暗い影を落としている。 AUKUSの第一の柱は、米英による豪州への原子力潜水艦の供与だ。原潜の燃料となる高濃縮ウランを非核保有国豪州に提供するものであるため、核不拡散に反するとの懸念がNPT再検討会議で出されてきた。インドネシアなどは「軍備競争を助長」することへの懸念をくり返し表明している。 第二の柱は、AI(人工知能)の軍事利用や極超音速ミサイルなどの「先進能力プロジェクト」で、日本の参加が決まっている。 中国への対抗という性格が色濃いこの同盟は、正式な条約でなくパートナーシップ協定として各国の議会を通さず進められている。同盟強化で対立を煽るよりも、地域共通の安全保障を図ることに注力すべきでないか。(川崎哲、ピースボート)

2024/08/18 · Leave a comment

広島・長崎の平和式典

広島・長崎での平和記念式典への参列や、さまざまなイベント開催を終えて、東京に戻りました。 このかん、イスラエルを平和記念式典に招待するかどうかという問題、そしてそれに対する米国をはじめとするG7諸国の対応という問題について、多くの報道がありました。この問題について、私もいろいろと発言しましたが、その報道等を以下にご紹介します。8月9日に公開されたデモクラシータイムスの番組(約70分)では、この問題について、そもそも平和式典というものがどのようなもので、どうあるべきかということについて、私の考え方をたっぷりとお話ししています。 X(ツイッター)の投稿:https://twitter.com/kawasaki_akira/status/1821142399751745806 毎日新聞(8月6日付):「ロシアを招かず、イスラエルは招いた広島の平和式典 その理由と評価」https://mainichi.jp/articles/20240806/k00/00m/040/310000c Japan Times(8月8日付):Nagasaki peace ceremony overshadowed by diplomatic wranglinghttps://www.japantimes.co.jp/news/2024/08/08/japan/nagasaki-ceremony-suzuki/ Asia Times(8月9日付)Pro-Israel G7 ambos boycott Japan A-bomb ceremonyhttps://asiatimes.com/2024/08/pro-israel-g7-ambos-boycott-japan-a-bomb-ceremony/ 朝日新聞(8月10日付):「大使ら欠席の背景に「許した」の誤解 ICAN川崎さんが感じた変化」https://digital.asahi.com/articles/ASS894CJMS89PTIL016M.html デモクラシータイムス(8月9日公開):G7大使「長崎」ボイコット 政治利用される平和の式典

2024/08/11 · Leave a comment