川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2023.12] イスラエルと核

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 イスラエルと核  イスラエルの閣僚がガザ地区への核爆弾の投下を「選択肢の一つ」と語った。恐るべき発言であり許しがたい。同国の別の閣僚はパレスチナ人を「人間の顔をした獣」とも表現している。敵を非人間化することで皆殺しが正当化される。およそ戦争はそうした差別思想に支えられているが、核兵器はその極限だ。 現実には、四国ほどの面積のイスラエルが隣接する名古屋市ほどの面積のガザ地区に核兵器を投下すれば、自国も被害を免れない。そうした現実を核保有国の閣僚が知らないのならなお恐ろしい。 イスラエル政府は公式には認めていないが、同国が核保有国であることは公知の事実である。イスラエル側の論理は、ホロコーストを経験したユダヤ人の国家にとって安全保障が必要だというものだ。めざすべきは、イスラエルとパレスチナの二国家共存と中東非核・非大量破壊兵器地帯の設立である。(川崎哲、ピースボート)

2023/12/07 · Leave a comment

[2023.11] ロシアのCTBT批准撤回

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 CTBT  プーチン大統領の指示でロシア議会は10月、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准撤回を可決した。同条約に署名したが未批准である米国と「同じ立場」に立つのだという。 CTBTは、原子炉をもつ44カ国がすべて批准して初めて発効する定めだ。うち核兵器国である米国と中国は署名したが未批准であり、これらを含む八カ国が未批准のため、96年にできた条約は未発効のままである。 ロシアは、核実験を再開する意思はなくCTBT機関への協力も継続するとしている。だが、国際法をもてあそぶ無責任な行為だ。 CTBTは、あらゆる核爆発実験を禁止している。核兵器禁止条約は、核爆発を伴うもの以外も含むすべての核実験を禁止している。これらの条約に未だ署名・批准していない国は、速やかにそれらを行い、いかなる核実験もさせない国際ルールを確立すべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2023/11/22 · Leave a comment

[2023.10] FMCT?

被団協新聞の10月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 FMCT?  9月の国連総会に合わせ、岸田首相は核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向けたハイレベル会合を開いた。 FMCTとは、核兵器目的の核分裂性物質(高濃縮ウランやプルトニウム}の生産を禁止する条約のことで、90年代からその交渉が呼びかけられてきた。材料の生産が止まれば核兵器の増産はできなくなる。だが既存の物質の扱いをどうするのか、また検証はどうするのかといった点をめぐり、議論は停滞してきた。提案から約30年が経った今も交渉開始の目途はたっていない。 一方、やはり90年代から提案されてきた核兵器禁止条約は、2017年に採択され21年に発効した。核禁条約は核兵器の開発を禁止しているから材料物質の生産も当然に禁止している。現存する核禁条約を無視して見通しの立たないFMCTを呼びかけるという政府の姿勢は滑稽だ。(川崎哲、ピースボート)

2023/10/22 · Leave a comment

[2023.9] 締約国会議にオブザーバー参加を

被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 締約国会議にオブザーバー参加を  8月に広島で開かれた与野党国会議員の討論会で、自民党を除く全政党の代表が、核兵器禁止条約の締約国会議に日本がオブザーバー参加することを求めた。公明も維新も明確にこの立場だ。自民党の寺田稔「原爆議連」会長はオブザーバー参加の「メリットは見いだせる」としつつ、核兵器国と非核兵器国の「対立の構図」にさせないことが重要であると述べ、党内で持ち帰り議論するとした。 岸田首相はこれまでの国会質疑でオブザーバー参加を求められると「核兵器国を関与させていかねばならない」と答弁している。しかしこれは不参加の理由にならない。むしろ日本が参加することで、核兵器国と非核兵器国の溝を埋める役割を果たすことができる。昨年はドイツなどNATO4カ国とオーストラリアが参加している。日本も、米国と協議の上で参加すればよいではないか。(川崎哲、ピースボート)

2023/09/23 · Leave a comment

[2023.8] 核共有とNPT

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核共有とNPT  ロシアがベラルーシに核兵器配備を進めている。プーチン大統領は「NPTに違反しない」と主張している。 ドイツやイタリアなどNATO5カ国には計約百発の米国の核兵器が置かれている。これはNPTに違反しないとの解釈が一般的である。その理由の一つは、これらの核配備がNPTができる以前の1950年代に始まっていることであり、もう一つは、これらの核兵器は米国が管理しているとされることだ。NATOの中には、戦争が始まればNPTは無効になりこれらの国々が米国と核兵器を共同運用しても問題ないとの主張がある。 ロシアによるベラルーシへの配備はNPT成立後初のケースとなる。管理はロシアが続けるというが、ルカシェンコ大統領は「我々の兵器だ。我々が使う」とも述べている。 ポーランドも核共有を求め始めた。NPTが崩れつつある。(川崎哲、ピースボート)

2023/08/23 · Leave a comment

[2023.7] 増大する核兵器支出

被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 増大する核兵器支出  6月、ICANは世界の核兵器支出報告書を発表した。核保有9カ国による昨年の支出総額は829億ドル(11兆円超)に上り、うち290億ドル以上が民間企業の収益になっている。全体の半分以上が米国のもので、その額は437億ドル。ロシアは米国の22パーセントにあたる96億ドル、中国は同27パーセントにあたる117億ドルを支出している。 民間企業にかかる継続中の核兵器関連契約総額は2786億ドル(39兆円)で、中には今後数十年続くものもある。昨年は159億ドル(2兆円)以上の新規契約が結ばれた。これらの企業は政府へのロビー活動に、米仏2カ国だけで1.1億ドル以上(158億円)費やしている。また核保有国の主要10のシンクタンクは、政府や核兵器製造企業から2.1~3.6千万ドルを受け取っている。まさに核兵器ビジネスである。(川崎哲、ピースボート)

2023/07/21 · Leave a comment

[2023.6] アクション・プラン?

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 アクション・プラン?  G7では日本の「ヒロシマ・アクション・プラン」が支持されたと政府は自賛している。だがその内容はどうか。 第一に「核不使用の継続」。ならばなぜ核の使用・威嚇を禁じた核兵器禁止条約に反対するのか。「先制不使用」にさえ反対しているではないか。第二に「透明性の向上」。2010年のNPT会議以降言われ続けているが、核兵器国は報告書式にすら合意できていない。第三に核の「減少傾向の維持」。イギリスは二年前に表明した核保有数上限の引き上げを撤回すべきだ。第四に原子力の平和利用の促進。日本の大量のプルトニウム保有や、福島の処理汚染水海洋放出に対する国際的懸念にどう答えるのか。第五に被爆地訪問と軍縮教育の促進。これは被爆者やNGOが長年やってきた分野だ。何か取り組むなら市民と協力すべきだが、政府からそうした打診は今のところない。(川崎哲、ピースボート)

2023/06/22 · Leave a comment

[2023.5] 核兵器への援助

被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核兵器への援助  ロシア国防省は4月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行い成功したと発表した。新型ミサイルの開発に向けたものだといい、米政府には事前通告をしたとしている。 ミサイルは南部の試験場から発射され、隣国カザフスタンの試験場に置かれた標的に命中したという。カザフスタンの試験場は、これまでもロシアの実験に使われてきた。 カザフスタンは核兵器禁止条約の締約国である。同条約は第1条で、核兵器の開発、保有、使用を禁止し、それらの行為をいかなる形であれ援助、奨励、勧誘することを禁止している(e項)。ICBMは核兵器の運搬手段であり、その実験に協力することは核兵器開発の援助にあたると考えるべきだろう。カザフスタン政府は締約国としてまずはしっかりと説明し、今後ミサイル実験に協力しないと表明すべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2023/05/16 · Leave a comment

[2023.4] G7広島サミットへ

被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 G7広島サミットへ  5月19日に始まるG7広島サミットは、被爆地で開催される初の主要国首脳会合となる。核廃絶に向けてサミットがなすべき事項を端的に3つ挙げたい。 第一に、首脳らは被爆者と会い証言を聞き、原爆資料館をしっかりと見学すべきである。 第二に、首脳宣言は、核兵器のあらゆる使用がもたらす壊滅的な非人道的結末への憂慮を表明すべきである。これは過去のNPT再検討会議で合意されている表現である。核保有3カ国と核傘下4カ国の首脳が再表明することの意義は大きい。 第三に首脳らは「核兵器のいかなる使用・威嚇も許されない」ことを明示的に表明すべきである。昨年11月のG20バリ宣言はこれを表明しているから、G7にもできるはずだ。ロシアの核を非難するのは当然だが、あらゆる核の使用・威嚇が許されないと確認することこそ、その廃絶への第一歩となる。(川崎哲、ピースボート)

2023/04/17 · Leave a comment