川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2019.1] ジェンダーと核兵器

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ジェンダーと核兵器 核兵器とジェンダー(性)というテーマへの国際的関心が高まっている。近年のNPT会議ではアイルランドが積極的に発言し文書を出している。論点は主に2つだ。 1つは核兵器が女性に偏った被害を与えること。放射線の影響は男性よりも女性とくに少女に大きく現れることが科学的に報告されている。差別やトラウマなどで女性に特有のものがあることは被爆者の経験からもいえる。こうした観点は核兵器禁止条約の前文にも記された。他の軍縮条約でも「ジェンダーに基づく暴力」に注目が集まり、昨年のノーベル平和賞は性暴力と戦う人々に授与された。 もう1つは軍縮過程への女性の参加拡大の必要性だ。軍事・安全保障の議論の場は男性支配が顕著で、なかでも日本は極端だ。政府、非政府を問わず女性の参加拡大に系統的に取り組むことが待ったなしの課題である。(川崎哲、ピースボート)

2019/01/08 · Leave a comment

[2018.12] 迷走する日本決議

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 迷走する日本決議 国連総会第一委員会で日本が提出した核兵器廃絶決議が賛成多数で採択され、政府は核兵器国と非核兵器国の橋渡しをしたとしている。だが実際は、これまで賛成していた米仏は棄権で、核兵器国からの賛成は英のみだ。オーストリアやメキシコなど核兵器禁止条約の推進諸国は昨年に続き棄権している。核兵器禁止条約に言及しないばかりか、過去のNPT合意文書にある核軍縮の表現を大幅に薄めているからだ。 昨年の日本決議はこうした核兵器国へのすり寄りが厳しく批判され、賛成を大幅に減らした。そこで今年は少し核軍縮の言及を復活させた。すると今度は米仏が拒絶した。米国は、NPT第6条(核軍縮)や過去のNPT合意への言及を嫌ったという。これらの条文や合意じたいを拒絶するようではNPT体制の信頼性が揺らぐ。開き直る核兵器国へのすり寄りは危険だ。(川崎哲、ピースボート)  

2018/12/09 · Leave a comment

[2018.11] INF破棄の衝撃

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 INF破棄の衝撃 トランプ米大統領は中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄すると表明した。新たな核軍拡競争への道を開く危険な決定だ。 INFは戦略兵器削減条約(START)とならび、冷戦後の米ロ間の核軍縮・軍備管理の基礎をなしてきた。 今年2月の新戦略でトランプ政権は「使いやすい」小型核の開発を打ち出している。この路線を突き進めば核軍拡競争を導くのは必至だ。イラン核合意からの離脱と同様、国際条約を通じた軍縮を否定する米国の一国主義は目に余る。NPT第6条の核軍縮義務にも明らかに逆行する。 日本政府は米国に明確に警告を発し再考を促すべきである。日本はNPT下で核保有国との「橋渡し」をすると言ってきたはずだ。 国際条約による軍縮そのものの信頼が揺らげば、北朝鮮の非核化交渉や中国を軍縮に関与させるという観点からもマイナスだ。(川崎哲、ピースボート)

2018/11/23 · Leave a comment

[2018.10] 兵器の被害者

被団協新聞の10月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 兵器の被害者 ピースボートのツアーでカンボジア・シエムリアップの地雷原を訪ねた。約30年続いた戦争により多数の地雷、クラスター弾、不発弾が残され、和平協定から25年以上が経つ今も撤去作業は続いている。地元民が金属探知機を持ち確認の杭を打ちながら歩き、反応があれば手作業で掘り出すという地道な作業だ。除去が完了するにはまだ10年近くを要する。 現地の平和博物館には戦争で使われた膨大な兵器が展示されていて、気が滅入る。対ベトナム攻撃の延長で米軍がカンボジアに投下したクラスター弾の総計は2千7百万に上るという。カンボジアの人口の実に倍である。 対人地雷禁止条約には被害者援助の義務が定められ、同様の規定は核兵器禁止条約にも作られた。だが被害者が現に直面する課題は途方もないもので、被害者援助といった法律用語が軽々しく聞こえてしまうほどだ。(川崎哲、ピースボート)

2018/10/22 · Leave a comment

[2018.9] 核抑止論の愚かさ

被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核抑止論の愚かさ 8月6日の広島の式典では湯崎知事の挨拶が異彩を放った。知事は核抑止論を仲の悪い隣家に例えた。お隣のご一家全員を家ごと吹き飛ばす爆弾を仕掛けてある。お隣もうちを吹き飛ばす爆弾を仕掛けている。「決して大喧嘩にはならないし爆弾は多分誤作動しない」から安心しろ。こんな話を大人が本気で子どもに説明できるのか、と問うたのだ。若い世代には、核の恐ろしさより、核の愚かさを伝えることの方が早いのかもしれない。 日本政府による核軍縮「賢人会議」は今年3月の提言で「核抑止は…安定を促進する場合もあるとはいえ、長期的かつグローバルな安全保障の基礎としては危険なもの」だとした。だから「より良い長期的な解決策」が必要だという。その通りだ。しかも「長期的な」などと言ってはいられない。隣家の爆弾が誤爆する可能性があるのだから。(川崎哲、ピースボート)

2018/09/16 · Leave a comment

[2018.8] 核兵器禁止条約発効へのたたかい

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核兵器禁止条約発効へのたたかい  核兵器禁止条約が採択されてから一年が経った。7月現在59カ国が署名、11カ国が批准している。50カ国が批准するとこの条約は発効する。NPTが発効に2年、化学兵器禁止条約が4年かかっているのに比べ遅いとはいえない。だが条約に賛成した122カ国の半分もまだ署名していないのは事実だ。それには米ロ仏など核保有国による強い圧力がある。 ピースボートの被爆者「証言の航海」は5月以降、ギリシャの首相、アイスランドの外相、カナダの外務政務官、スリランカの外務次官らに署名・批准を要請してきた。核廃絶の目標は共通だがNPTなど既存の枠組みが重要だとして、慎重な国々が多い。北大西洋条約機構(NATO)諸国は申し合わせたかのように同じセリフだ。 9月26日には国連で第2回署名式が開かれる。市民からのもう一押し、二押しが必要だ。(川崎哲、ピースボート)

2018/08/18 · Leave a comment

[2018.7] 朝鮮半島の非核化-ICANの提言

被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 朝鮮半島の非核化ーICANの提言  核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は米朝首長会談に先立ち提言を発表した。朝鮮半島非核化への5つのステップである。 第一に、核兵器の非人道性を認識すること。非核化の大前提だ。朝鮮人被爆者の声に耳を傾けよ。第二に、核兵器禁止条約に加入し核兵器を拒否すること。それは韓国や日本の課題でもある。第三に、国際的検証の下で核兵器を除去すること。 第四に、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准。北朝鮮は核実験をやらないと自ら宣言したのだからすぐに署名すべきであるし、米国は議会で批准すべきだ。第五に、核不拡散条約(NPT)と国際社会への復帰。これには米国がNPT上の核軍縮義務を履行することも含まれる。 米朝合意は歴史的なものだが、いまだ「二人の合意」の域を出ない。国際法の枠組みの下で確かな軍縮につなげねばならない。(川崎哲、ピースボート)    

2018/07/15 · Leave a comment

[2018.6] NPT準備委員会-両論併記?

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 両論併記?  核兵器禁止条約の成立後初めてとなるNPT準備委員会が開かれた。オーストリアなど核兵器禁止条約推進国は、禁止条約が核の非人道性の認識の上にNPT第6条の核軍縮措置として作られたことを強調し、そのことを国際的な共通理解とすべきだと訴えた。また多くの国々が、禁止条約の署名・批准に取り組んでいると表明した。 これに対し核兵器国や同盟国は禁止条約批判を展開。核軍縮は安全保障を考慮に入れなければならないと強調した。ポーランドの議長のまとめ文書は、これらの見方を一段落ずつ併記。実際には禁止条約評価の声が大多数だったのに、かなり核兵器国よりのまとめだ。いかなる核兵器の使用も国際人道法違反との見解に「核兵器国は賛同しなかった」とも明記された。他国には核を持つなと強面で言いつつ自分たちには必要だという論法をいつまで続けるのか。(川崎哲、ピースボート)    

2018/06/25 · Leave a comment

[2018.5] 北朝鮮との交渉

被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 北朝鮮との交渉  前号で、北朝鮮が体制保証と引き替えに段階的な核放棄を約束する可能性はあると書いた。実際4月20日、北朝鮮は核・ミサイル実験の中止と核実験場の廃棄を発表した。核保有国ではあり続けるが、これ以上の核兵器開発はしないという意味にとれる。長距離ミサイルを発射しない、他国に核技術を移転しないというのは、米国向けのメッセージだ。 今後これを完全な核兵器放棄につなげていくことが課題だ。核実験場を廃棄するという以上、実験場や関連施設の国際的査察を求め、交渉し実現すべきだ。それが信頼に足る非核化への第一歩となる。査察・検証に日本は積極貢献すべきである。 北朝鮮は包括的核実験禁止条約(CTBT)に直ちに署名し、CTBT機関による査察も可能とすべきだ。その後、完全な非核化の合意と核兵器禁止条約加入をめざすべきである。(川崎哲、ピースボート)    

2018/05/13 · Leave a comment