川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2019.8] 対韓輸出規制の問題点

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 対韓輸出規制の問題点 韓国に対する半導体材料等の輸出規制が深刻な問題になっている。元徴用工問題に対する日本の事実上の報復だ。だが、植民地支配下での被害者が権利を求めているのであって、国家間の請求権は放棄されても個人の請求権がなくなるわけではない。日本は被害者の声に誠実に向き合うべきだ。 一方、日本政府の理屈は、大量破壊兵器等の拡散防止の輸出管理の一環だというものだ。国際諸協定に基づき、一定のスペックや要件を満たす物資は輸出規制の対象となる。だが主要な国際協定に参加している27カ国は「ホワイト国」として対象外となってきた。日本政府は韓国をホワイト国から外すという。しかし韓国を外すなら、他の26カ国と比べて何が問題なのかを説明すべきである。二国間の政治問題を国際協定の運用に恣意的に反映することは、国際的な不拡散体制の信頼性をも損なう。(川崎哲、ピースボート)

2019/08/21 · Leave a comment

[2019.7] 核軍拡競争の危機

被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核軍拡競争の危機 「核戦争に勝者はいない。ゆえに核戦争を戦ってはならない。」冷戦末期に米ソ首脳はこの認識の下で中距離核戦力(INF)全廃に合意し、長距離の戦略核は互いに削減するというSTARTプロセスを始めた。 冷戦終結から約30年が経った今、こうした核軍縮の土台が崩れようとしている。米国は、ロシアがINF条約に違反しているとして条約の破棄を通告。ロシアもこれに応じ、同条約は8月2日に失効する見通しだ。新STARTも21年に期限を迎える。延長や更新の見通しは立っていない。このままいけば1970年代以来初めて、世界の核二大国が保有核の法的な上限規制に縛られない状態が登場する。核軍拡競争の再来は現実的な危機である。 国際NGOは共同で、米ロのSTART延長早期合意、いかなる国も中距離ミサイルを配備しないとの約束等を提言している。(川崎哲、ピースボート)

2019/07/25 · Leave a comment

[2019.6] 核軍縮の「環境作り」?

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核軍縮の「環境作り」? NPT準備委で米国は核軍縮の「環境作り(CEND)」に取り組むグループを立ち上げると発表した。核兵器国が核兵器禁止条約を頑なに拒否するなか、核軍縮を少なくとも議論する姿勢を示したことは評価できる。 だが懸念も多い。まず「環境が整わなければ軍縮できない」という言い訳に使われないか。核軍縮は核兵器国がNPTの下で負っている、環境いかんに拘わらず履行すべき法的義務だ。米政府主催のサイドイベントでは、これまでの義務や約束を反故にするようなものであってはならないとの注文が相次いだ。また核兵器国がNPTの外にグループを作ることがNPT形骸化につながるおそれもある。 元来、核兵器の非人道性の認識を広め核兵器禁止条約の締約国を増やすことは、まさに核軍縮を促す環境作りになる。グループ参加国にはその点も忘れないでもらいたい。(川崎哲、ピースボート)

2019/06/25 · Leave a comment

[2019.5] オランダでの議論

被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 オランダでの議論 核兵器禁止条約への加入を表明した国は、米同盟国ではまだない。そんな中でも、オランダは積極的な国内議論を行っている。昨年議会が政府に対し同条約への加入に関する検討を行うよう求め、これに政府が回答した。 それによれば、オランダが同条約に加入するために国内法を何ら変更する必要はない。しかし、NATO加盟国である以上は核抑止政策から脱することはできず、ゆえに同条約には入れないというのだ。条約に入れないのは法的理由ではなく政治的理由からだということになる。したがって、将来政策が変われば加入はありうるともいえる。 オランダはNATO国で唯一禁止条約交渉に参加した国だ。その背景には、市民活動と議会の連携がある。それに比べて日本では国会が静かすぎる。市民が国会を刺激し、同様の議論をさせていかなければならない。(川崎哲、ピースボート)

2019/05/23 · Leave a comment

[2019.4] 米朝とベトナム

被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 米朝とベトナム 米朝会談に合わせてハノイを訪れた。朝鮮半島非核化へのICANの提言を関係政府やメディアに伝えるためだ。現地では両国旗が街中に並び国を挙げて会談を歓迎していた。 社会主義国ベトナムは北朝鮮と長い友好関係を持つ。昨年のシンガポール同様、米朝ともに良好な関係で治安もよいことが開催地に選ばれた理由だろう。 現地市民団体のリーダーが「ベトナムには朝鮮の人たちに伝えられる経験がある」と誇らしく語っていたのが印象的だ。50年代の朝鮮戦争も60~70年代のベトナム戦争も、米ソ対立を背景に国が分断されての戦争だった。今日のベトナムは、かつての敵国と関係を密にし経済発展に邁進している。この会談の誘致じたい、そうした戦略の一環だ。二回にわたる会談で、えられた非核化の成果は限定的だが、東南アジアの独自外交力は世界に強く示された。(川崎哲、ピースボート)    

2019/04/18 · Leave a comment

[2019.3] 核軍縮はどこへ行く?

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核軍縮はどこへ行く? 米国がINF(中距離核戦力)条約離脱を宣言し、同条約は8月に失効する見通しだ。米国の動機はロシアの条約違反や中国の核戦力だと言われる。だが自ら条約を破棄したことで、もはやロシアの違反を主張できなくなった。中国を巻き込んだ新条約をとの声もあるが、中国への誘因はなく実現見通しはない。 冷戦後の米ロ核軍縮の二本柱は、戦略核を減らすSTARTと、中距離核全廃のINF条約だった。その一本が破棄された。これで21年に期限切れを迎えるSTARTが更新されなければ、冷戦後初めて、米ロが核軍縮の具体的な法的義務を負わない状態となる。 NPT第6条の核軍縮義務はどうなるのか。米国は昨年来、核軍縮の「条件創出」を提唱し始めた。いわば、安全保障面での条件が整わなければ軍縮できないという言い訳だ。核軍縮そのものが雲散霧消の勢いだ。(川崎哲、ピースボート)    

2019/03/14 · Leave a comment

[2019.2] 議会のイニシアティブ

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 議会のイニシアティブ 核兵器禁止条約をめぐり各国の議会が活発に動いている。NATO加盟国であるイタリア、ノルウェー、アイスランド、オランダでは禁止条約加入の条件や影響を議論することが議会決議で決まった。 そのうちノルウェーでは政府が条約加入に否定的な報告を出したが、NGOが反論を提示し議論は続いている。 NATOではないが近い立場のスウェーデンやスイスでも同様の動きがある。スイスでは政府が条約加入に否定的な立場をまとめたが、議会は上下院ともに条約に加入せよとの決議を上げた。 オーストラリアでは野党・労働党が政権をとったら禁止条約に加入するとの方針を決定した。ICANの働きかけの成果だ。スペインでは新政党ポデモスが禁止条約署名を含む政策合意を政府と結んだ。核の傘下の国々での動きである。比べて日本の国会のなんと静かなことか。(川崎哲、ピースボート)  

2019/02/17 · Leave a comment

[2019.1] ジェンダーと核兵器

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ジェンダーと核兵器 核兵器とジェンダー(性)というテーマへの国際的関心が高まっている。近年のNPT会議ではアイルランドが積極的に発言し文書を出している。論点は主に2つだ。 1つは核兵器が女性に偏った被害を与えること。放射線の影響は男性よりも女性とくに少女に大きく現れることが科学的に報告されている。差別やトラウマなどで女性に特有のものがあることは被爆者の経験からもいえる。こうした観点は核兵器禁止条約の前文にも記された。他の軍縮条約でも「ジェンダーに基づく暴力」に注目が集まり、昨年のノーベル平和賞は性暴力と戦う人々に授与された。 もう1つは軍縮過程への女性の参加拡大の必要性だ。軍事・安全保障の議論の場は男性支配が顕著で、なかでも日本は極端だ。政府、非政府を問わず女性の参加拡大に系統的に取り組むことが待ったなしの課題である。(川崎哲、ピースボート)

2019/01/08 · Leave a comment

[2018.12] 迷走する日本決議

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 迷走する日本決議 国連総会第一委員会で日本が提出した核兵器廃絶決議が賛成多数で採択され、政府は核兵器国と非核兵器国の橋渡しをしたとしている。だが実際は、これまで賛成していた米仏は棄権で、核兵器国からの賛成は英のみだ。オーストリアやメキシコなど核兵器禁止条約の推進諸国は昨年に続き棄権している。核兵器禁止条約に言及しないばかりか、過去のNPT合意文書にある核軍縮の表現を大幅に薄めているからだ。 昨年の日本決議はこうした核兵器国へのすり寄りが厳しく批判され、賛成を大幅に減らした。そこで今年は少し核軍縮の言及を復活させた。すると今度は米仏が拒絶した。米国は、NPT第6条(核軍縮)や過去のNPT合意への言及を嫌ったという。これらの条文や合意じたいを拒絶するようではNPT体制の信頼性が揺らぐ。開き直る核兵器国へのすり寄りは危険だ。(川崎哲、ピースボート)  

2018/12/09 · Leave a comment