川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2021.7] 濃縮と再処理

被団協新聞の7月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 濃縮と再処理  ウランの濃縮と使用済み核燃料の再処理は、核兵器開発に直結しうる「機微」な技術と呼ばれる。原発の燃料は低濃縮ウランだが、高濃縮ウランは核兵器の材料となりうる。また使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムは、やはり核兵器の材料になりうる。 1992年に韓国と北朝鮮が出した非核化共同宣言は、両国が「濃縮も再処理もしない」と約束していた。 一方、日本は濃縮も再処理も行っている。とくに使用済み燃料を全量再処理するとの政策で、現在45トンものプルトニウムを有している。核兵器約8000発に相当する量だ。そんな日本を見て、韓国では自分たちも同様の権利を持ちたいとの声が上がっている。これは朝鮮半島非核化への妨げとなる。まずは日本が率先して核兵器の材料となりうる物質を作るのを止め、さらにそれを地域全体の合意にしていくべきだ。(川崎哲、ピースボート)  

2021/07/19 · Leave a comment

[2021.6] ああ言えばこう言う

被団協新聞の6月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ああ言えばこう言う  この間、ペリー元国防長官やカントリーマン元国務次官補が、米国が核兵器の先制不使用政策をとろうとしたが日本の反対で実現しなかったと証言した。4月、この問題を国会で問われた茂木外相は、先制不使用は「すべての核兵器国が検証可能な形で同時に」行わなければ機能せず、検証もできない宣言で「わが国の安全保障に万全を期すことは困難」と述べた。こちらから核を先制使用するのはやめようという提案に対して、相手が先制不使用を宣言しても信用できませんと返している。話のすり替えだ。 核兵器禁止条約に対して政府は「そのような包括的な合意は時期尚早だ。一歩一歩進むべきだ」と言ってきた。では先制不使用という一歩を踏み出してはどうかと言われると「包括的な合意がないから無理だ」という。ああ言えばこう言う。そもそも核兵器をなくす気があるのか。(川崎哲、ピースボート)  

2021/06/14 · Leave a comment

[2021.5] 日米共同声明

被団協新聞の5月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 日米共同声明  4月、菅・バイデン両首脳の初の共同声明では、米国による「核を含むあらゆる種類の米国の能力」を用いた日本防衛への「揺るぎない支持」が表明された。2017年の安倍・トランプ両首脳の初声明も「核」を明示していたが、それが再確認された形だ。3月の日米安保協議委員会(2+2)で合意された「拡大抑止の強化」が踏襲されている。 今回の共同声明は「台湾海峡」に言及するなど、中国と対峙する姿勢を鮮明に打ち出した。報道は米中新冷戦だとばかりの過熱ぶりだ。人権、民主主義、法の支配などの価値の共有が叫ばれているが、「平和」もまた基本的価値であるのを忘れてはならない。国連憲章の紛争の平和的解決の原則、日本国憲法の平和主義。核兵器についてはNPT第6条の下で米中共に核軍縮義務を負っている。まちがっても軍備競争に陥ってはならない。(川崎哲、ピースボート)  

2021/05/15 · Leave a comment

[2021.4] イギリスの危険な決定

被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 イギリスの危険な決定  英ジョンソン政権は3月、新しい外交安保政策で、保有核弾頭数の上限引き上げを発表した。同国は昨年6月現在195発の核弾頭を持っている。これを20年代半ばまでに180発以下にすると公約してきたが、今回これを撤回し、保有上限を260発にするというのだ。4割以上の引き上げである。イギリスはこれまで5核兵器国の中ではもっとも誠実に核軍縮に取り組んできただけに、驚くべき方針転換である。 脅威として名指しされたロシアや中国が反発して同様の行動を取れば、世界規模で核軍拡競争を助長しかねない。グテーレス国連事務総長も憂慮を表明している。NPT第6条の核軍縮義務や過去の再検討会議合意に違反していることは明らかであり、8月のNPT再検討会議でどう説明するのかが注目される。日本政府はきちんと憂慮を伝達し説明を求めるべきだ。(川崎哲、ピースボート)  

2021/04/18 · Leave a comment

[2021.3] 軍縮とジェンダー

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 軍縮とジェンダー  軍縮にジェンダー(社会的な性)の視点を取り入れる動きが広がっている。2000年に国連安保理が上げた、国際平和活動への女性の完全参加を求める決議がその原点だ。近年ではNPT会議でもジェンダーと軍縮が論じられている。 論点の一つは、紛争や武器により女性に偏った被害が出ていることだ。直接的な性暴力はもちろん社会的影響もある。核兵器の場合には女性が放射線の影響を特に受けやすいという問題がある。 もう一つの論点は軍縮の議論の場への女性の参加促進である。各国政府代表団の男女構成は、今や評価の対象だ。男性だけの代表団や委員会、パネル討論などは忌避されている。 軍事力を「強い」優れたものとみなす価値観は、いわゆる「男らしさ・女らしさ」の固定観念と通じる。男女平等参画を通じて、そうした固定観念を打破する必要がある。(川崎哲、ピースボート)  

2021/03/19 · Leave a comment

[2021.2] 日本が核使用求める?

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 日本が核使用求める?  産経新聞によれば菅首相はバイデン大統領との初会談での共同声明に「米国の核で日本の防衛にあたること」の明記を求めるという。17年の安倍トランプ初声明で米国が日本を核を用いて防衛することが明記されたが、これは1975年の三木フォード会談以来のことだった。この再確認を日本が求める理由として、政府内に「オバマ政権の再来を懸念する声」があるという。バイデン氏が副大統領をつとめたオバマ政権では核の先制不使用が検討された。先制不使用となれば「中国や北朝鮮は米国の核攻撃を警戒せず、通常兵器で周辺国を攻撃できる 」というのだ。だから日本のために核を、いざとなれば先にでも使ってほしいというわけだ。 核兵器禁止条約により違法化された核の使用を、あろうことか日本政府が要請している。これが民意であるはずはない。国会は政府を厳に質すべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2021/02/21 · Leave a comment

[2021.1] 終わりの始まり

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 終わりの始まり  核兵器禁止条約は1月22日に発効する。原爆投下から75年を経て、ついに核兵器が違法化された。核兵器の終わりの始まりである。 保有国が加わらないからこの条約には実効性がないというのは誤りだ。対人地雷やクラスター弾は禁止条約が作られたことで生産も取引も使用も激減した。条約に加わらない保有国もその使用を止めるなど事実上の行動変容が起きた。国際法で禁じられた兵器の製造には銀行が投資を止めるので、生産の継続は困難になる。こうした効果が核兵器についても期待される。核兵器は使えない兵器となり、その維持は経済的負担でありリスクともなる。賢明な指導者なら核兵器によらない安全保障を構想するだろう。 日本政府はいまだに核兵器の他国への使用を前提とした政策をとっている。これを転換し日本を条約に加入させることが私たちの最大の課題である。(川崎哲、ピースボート)

2021/01/14 · Leave a comment

[2020.12] バイデン政権の核政策は

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 バイデン政権の核政策は  1月に誕生するバイデン新政権の下で米国の核政策はどう変わるだろうか。バイデン氏はオバマ政権の副大統領としてその核軍縮政策を支えた。とくに核兵器の役割を減らし先制不使用を宣言することを提唱していた。だがこれに強く反対したのが日本だった。日本を含む同盟国が反対しているということが、米政府内で先制不使用を採用しない理由にされたのである。バイデン氏は今回の選挙戦中も先制不使用支持の立場を表明している。 新政権の下で、核の基本政策である「核態勢の見直し」が行われるだろう。その際に同盟国と協議が行われる。そのとき日本は少なくとも先制不使用を支持すべきである。それすらできなければ、オバマ政権時代に続き、日本はまた核軍縮の足かせになってしまう。広島、長崎のような惨劇をくり返さないために、先制使用は望まない。当然のことだ。(川崎哲、ピースボート)

2020/12/14 · Leave a comment

[2020.11] NATOも動き始めた

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 NATOも動き始めた  核兵器禁止条約に対して北大西洋条約機構(NATO)諸国や日、韓、豪など米国と同盟関係を結ぶ国はいずれも未署名のままだ。だが最近、NATOで新しい動きが出てきた。 9月、2名の元NATO事務総長や潘基文元国連事務総長など米国の核の傘下国22カ国から計56人の元首脳・元外相らが核兵器禁止条約への支持と加入を求める書簡を公開した。 10月には、ベルギーで誕生した新連立政権が「核兵器禁止条約によって多国間の核軍縮をさらに加速させられるような方法を模索したい」とする政策を発表した。条約への加入を直接意味するものではないが、核兵器禁止条約に前向きに言及するのはNATO加盟国としては初めてだ。 核保有国との同盟国でも核兵器禁止条約に入ることは法的に可能だ。NATO諸国の新しい動きを踏まえ、日本の国会でも方針転換を論ずるべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2020/11/15 · Leave a comment