川崎哲のブログとノート

ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲の活動の紹介、オピニオン、資料などを載せています

[2021.4] イギリスの危険な決定

被団協新聞の4月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 イギリスの危険な決定  英ジョンソン政権は3月、新しい外交安保政策で、保有核弾頭数の上限引き上げを発表した。同国は昨年6月現在195発の核弾頭を持っている。これを20年代半ばまでに180発以下にすると公約してきたが、今回これを撤回し、保有上限を260発にするというのだ。4割以上の引き上げである。イギリスはこれまで5核兵器国の中ではもっとも誠実に核軍縮に取り組んできただけに、驚くべき方針転換である。 脅威として名指しされたロシアや中国が反発して同様の行動を取れば、世界規模で核軍拡競争を助長しかねない。グテーレス国連事務総長も憂慮を表明している。NPT第6条の核軍縮義務や過去の再検討会議合意に違反していることは明らかであり、8月のNPT再検討会議でどう説明するのかが注目される。日本政府はきちんと憂慮を伝達し説明を求めるべきだ。(川崎哲、ピースボート)  

2021/04/18 · Leave a comment

[2021.3] 軍縮とジェンダー

被団協新聞の3月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 軍縮とジェンダー  軍縮にジェンダー(社会的な性)の視点を取り入れる動きが広がっている。2000年に国連安保理が上げた、国際平和活動への女性の完全参加を求める決議がその原点だ。近年ではNPT会議でもジェンダーと軍縮が論じられている。 論点の一つは、紛争や武器により女性に偏った被害が出ていることだ。直接的な性暴力はもちろん社会的影響もある。核兵器の場合には女性が放射線の影響を特に受けやすいという問題がある。 もう一つの論点は軍縮の議論の場への女性の参加促進である。各国政府代表団の男女構成は、今や評価の対象だ。男性だけの代表団や委員会、パネル討論などは忌避されている。 軍事力を「強い」優れたものとみなす価値観は、いわゆる「男らしさ・女らしさ」の固定観念と通じる。男女平等参画を通じて、そうした固定観念を打破する必要がある。(川崎哲、ピースボート)  

2021/03/19 · Leave a comment

[2021.2] 日本が核使用求める?

被団協新聞の2月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 日本が核使用求める?  産経新聞によれば菅首相はバイデン大統領との初会談での共同声明に「米国の核で日本の防衛にあたること」の明記を求めるという。17年の安倍トランプ初声明で米国が日本を核を用いて防衛することが明記されたが、これは1975年の三木フォード会談以来のことだった。この再確認を日本が求める理由として、政府内に「オバマ政権の再来を懸念する声」があるという。バイデン氏が副大統領をつとめたオバマ政権では核の先制不使用が検討された。先制不使用となれば「中国や北朝鮮は米国の核攻撃を警戒せず、通常兵器で周辺国を攻撃できる 」というのだ。だから日本のために核を、いざとなれば先にでも使ってほしいというわけだ。 核兵器禁止条約により違法化された核の使用を、あろうことか日本政府が要請している。これが民意であるはずはない。国会は政府を厳に質すべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2021/02/21 · Leave a comment

[2021.1] 終わりの始まり

被団協新聞の1月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 終わりの始まり  核兵器禁止条約は1月22日に発効する。原爆投下から75年を経て、ついに核兵器が違法化された。核兵器の終わりの始まりである。 保有国が加わらないからこの条約には実効性がないというのは誤りだ。対人地雷やクラスター弾は禁止条約が作られたことで生産も取引も使用も激減した。条約に加わらない保有国もその使用を止めるなど事実上の行動変容が起きた。国際法で禁じられた兵器の製造には銀行が投資を止めるので、生産の継続は困難になる。こうした効果が核兵器についても期待される。核兵器は使えない兵器となり、その維持は経済的負担でありリスクともなる。賢明な指導者なら核兵器によらない安全保障を構想するだろう。 日本政府はいまだに核兵器の他国への使用を前提とした政策をとっている。これを転換し日本を条約に加入させることが私たちの最大の課題である。(川崎哲、ピースボート)

2021/01/14 · Leave a comment

[2020.12] バイデン政権の核政策は

被団協新聞の12月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 バイデン政権の核政策は  1月に誕生するバイデン新政権の下で米国の核政策はどう変わるだろうか。バイデン氏はオバマ政権の副大統領としてその核軍縮政策を支えた。とくに核兵器の役割を減らし先制不使用を宣言することを提唱していた。だがこれに強く反対したのが日本だった。日本を含む同盟国が反対しているということが、米政府内で先制不使用を採用しない理由にされたのである。バイデン氏は今回の選挙戦中も先制不使用支持の立場を表明している。 新政権の下で、核の基本政策である「核態勢の見直し」が行われるだろう。その際に同盟国と協議が行われる。そのとき日本は少なくとも先制不使用を支持すべきである。それすらできなければ、オバマ政権時代に続き、日本はまた核軍縮の足かせになってしまう。広島、長崎のような惨劇をくり返さないために、先制使用は望まない。当然のことだ。(川崎哲、ピースボート)

2020/12/14 · Leave a comment

[2020.11] NATOも動き始めた

被団協新聞の11月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 NATOも動き始めた  核兵器禁止条約に対して北大西洋条約機構(NATO)諸国や日、韓、豪など米国と同盟関係を結ぶ国はいずれも未署名のままだ。だが最近、NATOで新しい動きが出てきた。 9月、2名の元NATO事務総長や潘基文元国連事務総長など米国の核の傘下国22カ国から計56人の元首脳・元外相らが核兵器禁止条約への支持と加入を求める書簡を公開した。 10月には、ベルギーで誕生した新連立政権が「核兵器禁止条約によって多国間の核軍縮をさらに加速させられるような方法を模索したい」とする政策を発表した。条約への加入を直接意味するものではないが、核兵器禁止条約に前向きに言及するのはNATO加盟国としては初めてだ。 核保有国との同盟国でも核兵器禁止条約に入ることは法的に可能だ。NATO諸国の新しい動きを踏まえ、日本の国会でも方針転換を論ずるべきだ。(川崎哲、ピースボート)

2020/11/15 · Leave a comment

[2020.10] ミサイル軍縮をこそ

被団協新聞の10月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 ミサイル軍縮をこそ 敵基地攻撃能力の保有に政府・与党が前のめりだ。ミサイルの脅威に対し現在の迎撃システムが十分でないので、ミサイルが飛来する前に相手領内で叩こうというものだ。専守防衛の範囲内だとして「攻撃」とは言わず「ミサイル阻止」と称している。だが事実上の先制攻撃に道を開くものであり、憲法違反の疑いが濃厚である。 冷戦時代に米ソはABM条約を結び、互いにミサイル迎撃を禁ずることで均衡を図った。だが今世紀に入り米国はこれを離脱しミサイル迎撃網を構築。日本は米国と共同で開発、配備した。ロシアや中国はこれを脅威と捉え、軍拡に走った。迎撃だけでなく攻撃もするとなれば、当然相手は反応する。危険な軍拡競争のスパイラルである。 本来注力すべきは、ミサイルを落とすことより発射させないことだ。ミサイル管理と削減のための軍縮協議こそ必要である。(川崎哲、ピースボート)

2020/10/11 · Leave a comment

[2020.9] 人種差別と核廃絶

被団協新聞の9月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 人種差別と核廃絶 5月に米国で黒人男性が白人警官に殺された事件をきっかけにブラック・ライブズ・マターという反人種差別の運動が世界に広がっている。核廃絶運動においても、反差別や人権とのつながりを意識した議論が頻繁に聞かれるようになった。 論点は多様だ。そもそも原爆がドイツでなく日本に落とされた背景には人種差別があったという主張。また、核実験など核開発が植民地や先住民族の土地で行われてきたという「核の植民地主義」への批判。米国では、朝鮮戦争に際し核兵器が使用されてはならないと大きな声を上げたのはアフリカ系市民だったとの報告がある。 核兵器禁止条約は核被害者の権利に着目した人権条約でもある。核廃絶を広島・長崎だけでなく普遍的課題として世界に広める好機だ。一方、運動やNGOの中での人権と多様性保障という課題も忘れてはならない。(川崎哲、ピースボート)

2020/09/19 · Leave a comment

[2020.8] 核兵器禁止条約 発効へ

被団協新聞の8月号に寄せた連載コラム(非核水夫の海上通信)を紹介します。 核兵器禁止条約発効へ 採択3周年にあたる7月7日、ボツワナが核兵器禁止条約に批准した。批准国は40カ国となり、あと10カ国で条約は発効する。発効当初の50カ国に入っていたいと考える国は批准を急ぐだろう。50カ国批准の年内達成は十分に可能である。 発効後一年以内に締約国会議が開かれる。準備は既に始まっている。議題としては、条約への加入促進、禁止条項の解釈、核廃棄の期限と検証、核保有国が加入する手続きなどが想定される。それらが定まることで、核保有国へ「このようにして核を放棄しなさい」というメッセージとなる。保有国は反発し、核保有の正当性を主張するだろう。 このとき日本はどうするのか。保有国と一緒に核の正当性を語るのか。それとも、少なくとも将来に禁止条約に加わると約束するのか。被爆75年の今年、日本の立場が大きく問われる。(川崎哲、ピースボート)

2020/08/16 · Leave a comment